新型コロナウイルスに感染すると、重症化するリスクが高いとされる高齢者。苫小牧市内の町内会や老人クラブ、ふれあいサロンなどは活動を相次いで中止し、関係者は積み重ねてきた地域のつながりの希薄化を防ごうと奔走した。各高齢者施設のスタッフらは感染防止対策に追われるなど、緊張感の途切れない日々が続く一年だった。
一人暮らしの高齢者は近年、増加傾向にあり、地域の見守り活動は重要な役割を持つ。市内でも孤独死や社会的孤立を防ぐため、対象者の生活の様子を気に掛け、自宅訪問などが展開されてきた。しかし、コロナ対策は3密(密閉、密集、密接)の回避が基本。町内会などは行事の中止を余儀なくされ、高齢者の外出機会も減った。
4、5月ごろは地域活動の取材もほぼなくなり、市民の生の声に触れる機会が激減した。取材に応じてくれた人からは「感染が恐いので買い物は最小限にとどめている」「家でテレビを見ていてもコロナのことばかりで気分が落ち込む」といった声が上がっていた。
感染拡大がいったん落ち着いた6月ごろは感染対策を講じた上、地域活動や介護予防教室などが徐々に再開された。長期間の巣ごもりによる筋力や体力の低下も懸念されたが、軽運動や散歩をする高齢者が増えた。コロナ禍でも工夫して活動をする熱心さに、感染拡大の早期収束を願わずにはいられなかった。
高齢者施設は利用者の生活を手助けするため「密」が避けられない。取材で訪れた施設はいずれも危機意識が高く、感染者が出た場合のシミュレーションを念入りに行っていた。感染と非感染を区分けするゾーニング、影響を最小限にとどめる事業継続計画の策定など多岐にわたり施設内の換気や消毒、テーブルの飛沫(ひまつ)防止シート設置などできる限りの対策を講じ、防護具も十分に備蓄していた。
職員らは感染予防の緊張感を持ちつつ、利用者に不安を与えない気配りも欠かさない。面会制限で家族と会えない利用者のため、新たに「リモート面会」を始めた施設もあった。以前の紙面でも紹介したが、普段と変わらない利用者の笑顔が印象的だった。
一方、感染防止対策を取材した施設で、感染者が発生した事例もあった。「ここまで徹底しているのか」と驚くほどの対策を見聞きしたからこそ、感染症を完全に防ぐ難しさを改めて痛感した。先の見えない感染症に立ち向かうすべての人たちに、今後も取材や報道を通してエールを送りたい。