新型コロナウイルスの流行で来店客が減少するなど、外食産業に逆風が吹く中、キッチンカーを利用した軽食などの移動販売が注目を集めている。人が多く集まる場所に自ら出向き、3密を伴わずに屋外で商品をテークアウト販売できるのが強みだ。苫小牧市内では新規参入を目指す人をサポートしようと、実績を持つ飲食店が車両販売と出店ノウハウをパッケージで販売する事業も始めている。
軽トラックを改造した車両で、クレープやドリンク類を販売する「Bailey’s」の大関さやかさん(37)=緑町=は「いろいろな場所で出店でき、保健所への届け出で提供するメニューも変更できる」とキッチンカーのメリットを語る。
現在は衣料品店やドラッグストアなどが集まる市内柳町の商業施設を中心に営業中。一時はコロナ流行に伴う出控えで客足が落ち込んだものの、徐々に回復し現在は売り上げに大きな影響はないと話す。
一方、イベント出店を長年続けている市内錦町の居酒屋「ゴーゴー食堂」(鈴木正人代表)は、自社用のキッチンカーを導入した際にニーズの高さを知り、11月中旬に別会社「スタンドファクトリー」を設立して事業化に踏み切った。
鈴木代表(48)は昨年夏ごろからSNS(インターネット交流サイト)でキッチンカーに関する画像を掲載。新型コロナが流行して以降、電話などで複数の問い合わせが寄せられ、需要が高まっていることを知ったという。
新会社ではキッチンカーとして利用できるトレーラーの輸入販売のほか、開業サポートも行っており、「希望に応じて調理方法の提案や食材仕入れ先の紹介、出店先の確保なども対応している」と言う。
市内糸井に開設した同社は天井の高い元工場の建物を活用。販売車両を展示しているほか、倉庫内にキッチンカー用のテークアウトスペースも設けており、冬期間の出店場所を確保している。
同社を通じて開業した人の中には、経営する飲食店を休んで始めたケースもあるなど、すでに10台近くのキッチンカーが契約済み。鈴木代表は「コロナ禍という逆風を乗り切り、成功してもらえるよう今後もサポートしていきたい」と話している。