3 新千歳 コロナ禍で旅客激減 消えたにぎわい 苦闘の一年 

  • 取材ノートから, 特集
  • 2020年12月17日
航空各社の運航が止まって閑散とする新千歳空港の国際線ビル=3月
航空各社の運航が止まって閑散とする新千歳空港の国際線ビル=3月
報道部・平沖崇徳
報道部・平沖崇徳

  搭乗開始を心待ちにする旅行者、映画やエンターテインメント施設を楽しむ家族連れ、しばしの別れを惜しむカップル―。空港のにぎわいを当たり前だと思っていた。そんな認識が今年、崩れた。乗降客の実績が右肩上がりだった新千歳空港に、新型コロナウイルス禍がもたらした航空旅客の激減という異常事態。行き交う人がまばらになった空港を取材した時のショックは大きかった。

   今年初めからコロナ感染者が世界各国で広がり、各国政府が渡航を制限した。新千歳の国際線も3月末、海外航空会社が運航を停止。2019年に乗降客数が過去最多の386万2160人(前年比3・6%増)を記録した国際線だが、4月のターミナルビル内は閑散とした光景が広がった。カートに土産の大きな荷物を載せたインバウンド(訪日外国人旅行者)とにぎやかな声が消え、到着ロビーはテナントで働く従業員や警備員しか歩いていない。「コロナ前」を知る者として怖さすら感じた。テナント関係者は「売り上げに大きな打撃。長く続かないことを願う」と表情を曇らせた。

   国内線もコロナ禍が影を落とした。19年は乗降客数が過去最多の2073万2744人(前年比5・8%増)を記録したが、道と国の相次ぐ緊急事態宣言により旅客は激減。1月は前年同月比2・4%増の162万1452人だったが、2月は同6・7%減の145万8702人と減少に転じ、底になった5月は同93・7%減の11万697人まで落ち込んだ。航空会社の広報担当者は「早く新型コロナが収束してほしい」と力を込めた。

   5月の国内線ビル内。センタープラザでは歩く人はまばらで、かつては駐車スペースを探すのも大変なほど混み合った駐車場も閑古鳥が鳴いていた。訪れた日は物販や飲食など120店舗のうち、77店舗が休業を余儀なくされていた。営業しているテナントのスタッフも、暇を持て余しこわばった表情に見えた。物販店スタッフは「売り上げが9割も減ってしまった」と嘆き、飲食店従業員は「足を運んでくれるお客さんがいる。大変だが頑張るしかない」と前を向く。

   政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」で少しずつ回復傾向にあった旅客需要は11月以降、道内の感染再拡大で再び鈍り始めた。「Go To」は全国一斉停止が決まり、旅客回復の見通しは不透明で、国際線も運航再開のめどは立たない。苦闘する空港関係者の姿を目の当たりにし続けたこの一年。感染防止の徹底が前提だが、新千歳のにぎわいが復活する日を願っている。

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