苫小牧市新富町に本店を構える「花のみずの」は市内で計6店舗を展開。入学シーズン、母の日、クリスマス、正月―など年中行事に合わせて店内を装飾し、色とりどりの花を販売している。「お客さんに季節をお知らせしていくことを大事にしている」と代表の水野早重さん(69)。花屋の道に進んで約50年になる。「花が好き。どうしたらお客さんにも喜んでもらえるかをずっと考えてきた」と笑顔で話す。
空知管内上砂川町で生花店を営む両親の下、6人兄弟の末っ子として誕生。小さい頃から店の手伝いをし、花と関わってきた。高校卒業後、上京した兄の影響で1年間東京でさまざまな職種に就くも、「自分には花しかない」と決意。「花を勉強するなら(多くの種類が集まる)小樽へ行け」と言われ、小樽の生花市場で修行を重ねた。水揚げの方法やブーケ、祭壇の作り方などを学んだ。
25歳で独立を目指し苫小牧に移住。「老舗が少ないこともあって、誰でも受け入れてくれる新しい地域というイメージ」だった。音羽町に店を構え、花を持って会社を一軒一軒回る営業をスタート。自らガリ版で広告も刷った。この時が一番大変だったと振り返る。
34歳で店舗兼住宅を新富町に移した。三光町にステイ店、川沿町にパセオ店、2005年に閉店した苫小牧駅前の丸井今井にも出店していた。バブル期の年商は2億円に上ったという。
本店2階にはこれまで手掛けたリースや色鮮やかな花々、飾り付け用の置物がたくさんある。「これだけの材料をそろえている花屋は苫小牧にはないのでは」と自負。季節に合わせて内装や取り扱う花に工夫を凝らすが、「昨今は季節感さえ出ていれば何でもいいと購入する人が多い。もう少し品質や価格を吟味して、こだわって花を買ってほしい」と本音も漏らす。
これまでに47都道府県すべてと海外10カ国以上を旅した。毎年必ず、花の展示を見るために東京に2度、店内の飾り付けを探すため大阪に1度、足を運ぶ。旅行先の花屋や百貨店にも必ず立ち寄り、ブーケや花の並べ方などを参考にする。「まね事から自分のものにし、それを変化させていく」のが水野さん流だ。
よそにはないものを作りたいと、午前7時半には市場に行き、誰よりも早く下見をする。跡継ぎがいなくて困っているが、「ここの花屋はいつも飾り付けが違って楽しいね、と言ってもらえる店づくりを続けたい」と意気込む。
今月上旬から、手作りの正月飾りの販売を本店など4店で始めた。水引やしめ縄をアレンジした飾りや来年の干支(えと)の丑(うし)のマスコットが付いた置物など多種多様。若い人たちにも手に取って見てほしいと願っている。
(樋口葵)
水野 早重(みずの・とししげ) 1951(昭和26)年1月、空知管内上砂川町生まれ。小樽市内の生花市場で修業後、25歳で苫小牧市音羽町で生花店を開業。85年に現本店の新富町に移転した。市内6店を展開。苫小牧生花商業協同組合の代表も務めた。苫小牧中央ライオンズクラブ会員。苫小牧市新富町在住。