1 【シキナ(ガマ)】 ござ・花ござ 敷物や間仕切りなど多彩な用途

  • イコロ 資料に見る素材と技, 特集
  • 2020年12月12日
収蔵資料展で露出展示されているござ・花ござ。製作者、製作地、製作年が分かる資料
収蔵資料展で露出展示されているござ・花ござ。製作者、製作地、製作年が分かる資料
伝統的な染色を再現した試みを紹介
伝統的な染色を再現した試みを紹介
CT画像で花ござの編み方を伝えるコーナー
CT画像で花ござの編み方を伝えるコーナー

  アイヌ民族は身近にある植物を材料に用いて、さまざまな生活用具を作ってきました。アイヌ語でシキナと呼ばれるガマを材料としたござもその一つ。ガマ、スゲ、フトイなどの植物を材料にござを作ってきましたが、収蔵資料展「イコロ」の本コーナーでは、ガマを材料としたござに焦点を当てて展示しています。

   アイヌ民族は、日々の暮らしにおいて出入り口や窓に掛けたり、敷物や部屋の間仕切りにしたりして、ござを用いてきました。儀礼の際は模様入りの花ござを神聖な場をしつらえるために用いてきました。

   花ござを見ると、ただ一段一段編んでいるだけではなく、縁や模様を作るという手間をかけていることが分かります。ござの縁は1本のひものようにも見えますが、CT(コンピューター断層撮影装置)画像を見ると、編む過程で端を次の段に編み込む処理をしていることが分かります。縁を作ることでござの端が保護され、劣化が進みにくくなると考えられます。また、染色した樹皮を縦糸に折り込んで模様が作りだされていることも分かります。模様部分には染色した樹皮も用い、黒に染めるにはクルミやカシワなど、赤に染めるにはハンノキやイチイなどを使ってきました。そうした染色を再現する私たちの試みも展示しています。

   さて、アイヌ民族の民具資料には、製作者、製作地、製作年など基本情報が分からないものが多く、ござや花ござも例外ではありません。本コーナーの露出展示で紹介するござ、花ござは製作者、製作地、製作年が分かる大事な資料です。これらの資料は、個人の技法や伝承経路や資料が持つ地域差や通時性について、博物館において展示したり、調査研究したり、資料を復元したりする際に必要な情報を有するため、これから先の将来にわたって価値の高い資料だと言えます。

   (国立アイヌ民族博物館・中井貴規研究員)

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   白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館で今月1日に開幕した収蔵資料展「イコロ―資料にみる素材と技」=来年5月23日まで=。博物館の研究員や学芸員が展示資料と科学分析の成果を紹介する。

   ※「イコロ―資料にみる素材と技」は毎月第2・第4土曜日、次回から社会面に掲載します。

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