㊤温かみ感じる、原寸大の動物たち

企画展「紙とアート:吉田傑のダンボールといきもの」展示風景

  苫小牧市美術博物館で企画展「紙とアート:吉田傑のダンボールといきもの」が開催されている。ダンボールを素材とした動物の造形作品とはく製を展示。同館の細矢久人学芸員が2回にわたって解説する。

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   造形作家・吉田傑(1987~)は、ダンボールという身近な素材を「日常の象徴」として捉え、主として原寸大の動物作品を制作している。体毛や肌合いなど、質感へのこだわりを感じさせるその動物たちは、生き物としてのリアリティーを保ちながらも、温かみのある形態や表情がもたらされており、見る者に優しく穏やかな印象を与える。

   紙を素材とする表現に着目する「紙のまち苫小牧」ならではの企画ともいえるこの展覧会では、大型のアンモナイトがモチーフの作品をはじめとする吉田作品12点に対し、当館所蔵のアンモナイト化石のほか、エゾシカやリクガメ、サケのはく製を並べ置くコラボレーション展示を行っている。

   生きているかのようなリアリティーを放つ動物たちの視線が交差する会場は、サケをモチーフとする20体にも及ぶ作品群が宙に浮かぶ構成と相まって、連日、子どもたちの歓声が沸き起こるなど、人々に夢を与えるような内容となっている。

   ダンボールという身近な存在から生まれる造形は、紙ならではの柔軟性によって成立する工作の延長線上にあるものであり、自分たちもやってみたいという気を起こさせることだろう。制作体験の中には心の緊張を解消するある種のカタルシス(浄化作用)がある。

   こうした時期だからこそ、不要になったダンボールを使って工作というのも悪くない。その前にぜひ、展示空間を彩る「いきもの」たちのしなやかな存在に癒やされていただくこともお忘れなく。

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   13日まで。午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。

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