(24) 市民劇団 不安、葛藤抱え活動の道探る

  • 変わる日常 コロナ新時代, 特集
  • 2020年11月30日
マスクや消毒を徹底し稽古に臨む「群’73」の団員

  新型コロナウイルスの流行は、演劇活動にも影響を及ぼしている。苫小牧市内の劇団も春先から公演の中止や延期を余儀なくされた。コロナ対策を徹底し、活動が再開しつつあった矢先、またも道内で感染が急拡大。各団体は不安や葛藤を抱えながら、表現方法などを模索する日々が続く。

   市民劇団「群’73」は2月から舞台の予定をキャンセルし、4月までは稽古も見合わせた。須藤夏菜子代表(32)は「感染と不安の広がりで、演劇を続けられるのかさえ不透明だった」と振り返る。

   それでも文化行事の相次ぐ中止を目の当たりにし、「このまま何もしなければ苫小牧から文化の灯が消える」と危機感を募らせ、5月に団員7人でオンライン会議システム「ズーム」を使った「リモート台本読み」を行うなど活動を徐々に再開。7月からは稽古場での練習も重ねてきた。

   出演者の登場シーンによって、練習する日や時間を分け、マウスガードを装着するなど対策を強化。何とか9月の自主公演までこぎ着けた。

   当日は座席を1席ずつ空けて「密」を回避。劇中に休憩時間をつくって小まめに換気した。観客の反応は「安心して鑑賞できた」などと好意的。須藤代表は「『こんな時期に何をやっているんだ』という声を恐れていたが、やってよかった」と笑顔を見せた。11月15日の苫小牧市民参加演劇祭にも団員が出演。「応援してくれる人たちの思いに背中を押され、頑張れる」と語る。コロナ感染の急拡大が続く現状に「不安は拭い切れないが、地道に活動を続けたい」と意気込む。

  ◇

   市民劇団「C・A・W(カウ)」は2月末時点で、年内6公演の計画を白紙に戻した。鈴木英之代表(46)は「当時は(コロナについて)今よりも分からないことが多かったので万全を期した」と強調。来年3月に錦岡の新拠点で公演を計画し、「希望をつなぎたい」と話す。「密」を回避する時間差入場などの感染防止対策、映像配信など新たな表現方法も検討中。脚本も手掛ける鈴木代表は「いつかコロナの経験も舞台で表現する日が来る」と力を込めた。

   3月に道外の演劇ユニットによる苫小牧公演を中止した市内の舞台演出家、鈴木龍也さん(40)も「当時はリスクが大きかった」と振り返る。来年3月開催を計画中だが「警戒ステージが上がっており不安」と本音も。公演チケットやパンフレットを大切に保管し、待ちわびるファンらの激励に勇気付けられながら「演劇はライフワーク。無理せず再起を図る」と前を向く。

  (半澤孝平)

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