どうして、こんなことになったのだろう。新型コロナウイルス感染者が世界で6000万人を超えた。死者も増え続け140万人以上。
日本での感染確認も14万人、死者数は2000人を超えている。札幌は今や東京、大阪と並ぶ危険地帯。毎日の新聞やテレビで数字の増加を見てため息が出る。「甘く見ないで」。医療者から呼び掛けられて、感覚がまひしていることに気付く。感染者の苦しみや医療現場の困難を想像せず、数字だけで感染を捉えていないか。無症状や軽症者が多い―。情報の一部だけ聞き取り油断してはいないか。
感染症関連の本に、人類の歴史は細菌やウイルスとの戦いの歴史と教えられる。100年ほど前に猛威を振るったスペイン風邪は世界中で4880万人~1億人の命を奪ったそうだ。日本でも39万人が犠牲になった。感染者数ではなく死者の数だ。感染者が苦しめられたむごい症状も記録されている。「関節痛を訴えて泣いた。下腹部の痛みを訴え嘔吐(おうと)を繰り返した」「皮下に空気がたまり全身に広がっていく。破裂した肺から漏れ出た空気は寝返りを打つたびプチプチ音を立てた」。数字からは見えない事実だ。
危機や緊迫感という言葉が踊るテレビの国会中継に、マスクを鼻の下までずり下げた人も映る。経済と感染防止の二兎を追って進路の定まらない政治は決断の押し付けにも数日かかる。間もなく12月が始まる。一年はどう締めくくられるのか。(水)