やっぱり補塡(ほてん)していた、と思った人は多いだろう。東京地検特捜部が安倍晋三前首相の公設第1秘書らを任意で事情聴取している。首相在任中、安倍さんの後援会は政府主催の「桜を見る会」の前夜、東京の高級ホテルで山口県の支援者らの夕食会を開いていた。会費が不自然に格安で、安倍さん側が費用を補塡していれば、政治資金規正法や公職選挙法違反の可能性がある―として、弁護士らが刑事告発していた問題だ。25日には周囲が補塡していたことを認めているとの報道があった。今後の捜査が注目される。政治の私物化―。森友、加計問題も不透明なまま棚上げ状態が続いている。
その安倍政権下で、法務大臣だった河井克行、案里夫妻が先の参院選での大規模な買収の容疑で議員バッジを着けて被告席に座る。ばらまいた金の原資も問題だ。統合型リゾート(IR)誘致に係る汚職では元国交副大臣の秋元司被告らが罪に問われている。彼もバッジを着けたまま。裁判で偽証を求めた買収工作も事件化した。大衆は不祥事に慣れる。皆の関心は今、日々のコロナ感染者数に向く。
専門家らが警鐘を鳴らしていた冬が近づき、全国で感染者が急増している。欧州では再び経済と社会の活動を制限する国もある。特別措置は慎重でなければならないし、万一実行の際には人々の理解と協力が要る。混乱を最小にするためには政府への信頼が不可欠。信ずるに足る政府こそ必要なのだが。(司)