古い写真から見る明治時代の鵡川市街地 かつてのにぎわい物語る絵ビラ

  • THE探求 歴史から伝える「むかわ学」, 特集
  • 2020年11月19日
明治末の鵡川市街地の風景

 鵡川の市街地で明治の面影を残す建物と言えば、旧鵡川駅逓の布施旅館が有名でした。1910(明治43)年建築の木造2階建てでにぎやかだった頃の町の様子を伝えるシンボル的な存在として、住民に親しまれていました。しかし2018年の胆振東部地震で建物本体が傾き、そのままの状態で修理改築することは難しく、住民の安全が最優先だったため、町は歴史的な建物を保存する文化財としての観点と工事の安全性を両立させ、手解体で建物を分解し、保存可能な部材を保管することにしました。

 解体の時、町教育委員会も立ち会いました。北島詳三監督から「面白いものが出てきたので見てほしい」と頼まれ、2階の壁板を外した所に大正末期から昭和初期にかかる色鮮やかな絵ビラが張り込まれていたのを確認しました。

 いわゆるチラシです。17世紀ごろから近代を通じ、商業活動の促進を目的に一般へ広く配布されていました。元絵を見本に版木を彫り、色鮮やかな多色刷りの版画を印刷し、後から店名や商品名を書き入れる手法で大量に製造されました。題材には福の神、美人、暦などがあり、当時珍しかった自動車やラジオなど客の目を引き付けるような内容も好まれました。

 旅館から見つかった絵ビラはかつて鵡川市街にあった商店が配布したものでした。海産物雑貨商「大野商店」、和洋銅鉄打刃物「有坂金物店」、魚菜精肉「岡田商店」、味噌醤油干魚雑貨「浅利商店」、「大正堂薬舗岡田茂太朗商店」「カネ〆長井商店」など。大野商店はカムイししゃもで有名なカネダイ大野さんの前身です。

 胆振東部地震の数年前、明治末期の市街地の様子を写した絵はがきを発見しました。1911(明治44)年の夏に開催された皇太子殿下の北海道御幸を記念した絵はがきで、画像の隅に小さく「長井商店発行」と印字されていました。国道(現在の中央通り)の両側に低い木造建物が建ち並び、舗装のない道路を2頭立ての馬車が通行する様子が写っています。手前の商店の軒先には屋号カネ〆の看板が掲げられ、自転車の備えもあります。屋根は北海道らしい板ぶきが主流。旅館建物から昔の絵ビラが見つかったことで、絵はがきに写る風景はかつて国道沿いにあった長井商店の前の写真ということが分かりました。

 鵡川駅逓だった布施旅館の正面には、鵡川小学校と鵡川外七ヵ村戸長役場があり、少し離れて室蘭警察署鵡川分署、鵡川郵便局などがあったと地域の住民に聞きました。現在の松風から花園に至る中央通り沿いにあって昔、鵡川一区~四区と呼ばれた辺りが明治の繁華街に当たる街の中心部です。地震の後、旅館建物がなくなったことで、明治を伝える建造物はすっかりなくなってしまいました。

 (むかわ町教育委員会、田代雄介学芸員)

 ※第1、第3木曜日掲載

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