苫東・和みの森運営協議会会長 大井 正美さん(78) 豊かな森づくりに力  来年延期の全国育樹祭に向け環境整備  「森を育てる心は人を育てる」

  • ひと百人物語, 特集
  • 2020年11月14日
森の魅力を語る大井さん
森の魅力を語る大井さん
来賓を招いて開いた木道開通式(右から5人目が大井さん)=2016年10月
来賓を招いて開いた木道開通式(右から5人目が大井さん)=2016年10月
札幌市内の中学生が訪れ、森づくりを学ぶ=2020年9月
札幌市内の中学生が訪れ、森づくりを学ぶ=2020年9月
汐見町の実家近くできょうだいで撮影した写真(左端が大井さん)=1963年ごろ
汐見町の実家近くできょうだいで撮影した写真(左端が大井さん)=1963年ごろ

  「落ち葉を迷惑がる人もいるが、(酸素を出す)葉のおかげで息をしていられる。『ご苦労さま』と言わないと」。優しく語る大井正美さん(78)の森に対する愛着は深い。2007年に苫小牧市静川で開催された全国植樹祭の地「苫東・和みの森」で市民、企業、行政でつくる団体の会長として森づくりに励む。

   高松市出身。父の仕事の都合で4歳で北海道へ。後志管内真狩村、大滝村(現伊達市)を経て、小学5年で苫小牧市に移った。当時は苫小牧西港の造成工事が始まった頃。「大きなダンプが岩を積んで走っていた。これから伸びるまちの兆候があった」と振り返る。

   小中高校を市内で過ごし、卒業後は市内の新聞販売店に勤務した。配達にはバイクを使ったが、除雪が行き届いていない道路で立ち往生することも。つらいこともあったが「自分の仕事と決めていた。やめようとは思わなかった」。1972年に独立し、2005年まで販売店を営んだ。

   森との関わりは06年9月。いわゆる「平成16年台風」で、広範囲に及ぶ倒木被害のあった支笏湖地域で植樹活動に参加した。環境保全団体ウッドネット北海道のメンバーに誘われ、他の参加者と1000本のエゾマツの苗木を植樹。「環境や二酸化炭素(CO2)削減など、積み重ねが大事と理解した」と述懐する。

   翌年の全国植樹祭にも参加。当時の天皇、皇后両陛下をはじめ全国から1万人が参加し、48種2万本の苗木を植えた。作業に汗を流す中で「せっかく木を植えた場所。心を決めて保全に取り組まないと」と決意した。

   行政や民間企業、森づくり団体などが協働で森の保全と活用を進める「苫東・和みの森運営協議会」が09年に発足。13年には会長に就任した。会員と共に下草刈り、枝払い、間伐などに取り組み、森林教育の場として生かした。

   多くの人が森に親しめるよう「木道」造りにも尽力。車いす利用者に配慮し、曲がり角は緩やかなカーブにした。全180メートルが完成し、16年10月の開通式を「よくやり遂げることができた」と感慨深く迎えた。

   協議会は現在、「月に一度は森づくり!」と銘打つ育樹活動を実施。市民も含めた参加者がまき割りや間伐に取り組む。幼児向けの「森のようちえん」や社会人の野外活動体験、近年は札幌市の中学生が体験学習などを展開。18年には地域おこし協力隊員を事務局に迎えた。「森を育てる心は人を育てる」が持論だけに、学校にも和みの森を活用してほしいと願う。

   来年10月にはコロナ禍で1年延期された全国育樹祭が苫東・和みの森などで開かれる。「全国から来るお客さんに豊かな森を感じてほしい」。1年後を見据え、環境整備に一層力が入る。

  (平沖崇徳)

   大井 正美(おおい・まさみ) 1942(昭和17)年7月、高松市生まれ。苫小牧東小、東中、東高校を卒業し、新聞販売店を経営。苫小牧市環境審議会委員、NPO法人ウッドネット北海道苫小牧支部支部長のほか、中央長生大学学生会の代表も務める。趣味はカラオケ。動画投稿サイトで歌唱力を磨いている。苫小牧市有明町在住。

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