社会人野球の取材渦中にいた1997年は忘れ難い一年。当時存在の王子製紙苫小牧が夏の都市対抗、秋の日本選手権各道予選を勝ち、本大会に相次いで進出した。
同チームは1回戦で強豪の日本生命(大阪)と2大会連続で対戦して連敗した。7月の東京と10月の大阪であった2戦で先発登板し、王子打線の前に立ちはだかったのは日生のエース杉浦正則投手。投球の威力は存分。ときに変化を伴ってコースをずばり突く。この目で見て強烈な印象を抱いた。現役を退く2000年までに都市対抗ではチーム優勝2度と同時の最優秀選手「橋戸賞」にも選ばれた。
今週、在京勤務の同社法人営業部長杉浦正則さん、として苫小牧入りした。取材がかない、当方が国内二大大会の記憶に言及すると快く応じてくれた。銅メダル獲得の1992年五輪代表チームで一緒に戦った白老町・大昭和製紙北海道投手の渡部勝美さん=現・北海道ガス監督=の名も挙げて懐かしんだ。その後、駒大苫小牧高女子硬式野球部員と一緒に講話を聴く。
「3割打者は7割失敗。投手も狙い通り投げられる球は少ない。野球は失敗だらけのスポーツ」と語りだした。1カ月間の公式戦で2本喫した満塁サヨナラ本塁打を例に「失敗しても、同じ失敗を繰り返さないよう、そこからチャレンジする」。次に向かう過程で練習や技術的な工夫を考え抜き、実行して再起し続けた。ミスターアマ野球の話に改めて感服した。(谷)