ウポポイ HPで情報発信強化 ネットや電話 相次ぐ中傷受け

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  • 2020年10月29日
国立アイヌ民族博物館ホームページに設けた「アイヌの歴史・文化の基礎知識」コーナー
国立アイヌ民族博物館ホームページに設けた「アイヌの歴史・文化の基礎知識」コーナー

  白老町のアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)やアイヌ民族に対する誹謗(ひぼう)中傷的な意見が、インターネット上の投稿などで飛び交っている。「ウポポイの展示物や踊りはインチキ」といった書き込みもある。施設を運営するアイヌ民族文化財団(本部札幌市)は、アイヌ民族の歴史や文化、それを伝える取り組みを理解してもらうため、ホームページで情報発信を始めた。

   「博物館の展示物はうそばかり。アイヌ舞踊もそうだ」―。ウポポイが7月に開業した後、ネット上でそうした内容の投稿が続いている。アイヌ民族に対し「差別などない」「先住民族ではない」といった歴史認識に関わる意見や、「偽アイヌ」「特権を得ている」など差別的な書き込みもある。財団にもさまざまな意見が直接メールや電話などで寄せられ、関係者は「心ない誹謗中傷は差別を助長しかねない」と心配する。

   こうした状況の中で財団は今月、博物館のホームページに「よくある質問―アイヌの歴史・文化の基礎知識」を新設。「アイヌ民族はどのような歴史を歩んだか」「なぜ先住民族と認められているのか」「同化政策で暮らしはどのような影響を受けたか」など、15項目の質問に答えるQ&A形式で情報を発信している。

   例えば、アイヌ民族の歴史に関しては「北海道に人類がやって来た3万年前ごろにまでさかのぼることができる」と説明。先住民族として認められている理由については、政府の「アイヌ政策の在り方に関する有識者懇談会」の報告書(2009年)に基づき、「近代国家(明治政府)が形成される過程で多数民族の支配を受け、それでもなお独自の文化とアイデンティティーを保持していることから、先住民族と考えることができるとされている」と示した。

   また、ネット投稿で取り上げられることが多い「アイヌ民族は日本人と違うのか」―という疑問に対し、「日本国籍を持つアイヌ民族は日本国民だが、固有の文化を持つ独自の民族である」と明快に説明。明治以降の同化政策に関しては「多数者の和人からの民族差別が激しくなり、アイヌ民族として生きることが非常に難しい社会になった。この結果、アイヌであることを隠し、日本人として認められるように伝統文化を身に付けない道を選んだアイヌ民族が多くいた」と詳しく解説している。

   ウポポイをアイヌ文化復興・発信拠点として機能させていく上で、博物館の佐々木史郎館長は「歴史や文化を正しく知ってもらうことが大事だ」と強調。ウポポイやアイヌ民族をめぐるさまざまな誤解、偏見を解消し、理解を得る取り組みを進める考えだ。

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