国が白老町のポロト湖畔に整備したアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)が12日で開業3カ月を迎えたことを踏まえ、管理運営に当たるアイヌ民族文化財団(本部札幌市)が13日、ウポポイで記者会見を開いた。3カ月の入場者が11日までに12万人を超えたことを明らかにした上で、對馬一修運営本部長は「新型コロナウイルス対策で不便を掛けている中、収容人数の拡大などできる限りの改善を図り、来場者の期待に応えられるようにしたい」との考えを示した。
7月12日の開業から今月11日(営業日数79日)までに12万414人の入場者を数えたことに、對馬運営本部長は「入場の事前予約制や施設収容人数の抑制などコロナ対策の制約がある中でも、コンスタントに来場していただいている」とし、順調な滑り出しと受け止めた。国や関係機関の緩和策を踏まえ、10月から国立アイヌ民族博物館の1時間当たり入館者数を110人から200人に、古式舞踊の上演施設・体験交流ホールの収容人数を132人から272人にそれぞれ拡大したとし、「鑑賞だけでなく、感染防止策で見送っていた体験プログラムを求める声も寄せられており、状況を見ながら少しづつ実施して本来の形になるようにしたい」と話した。また、雪や寒さで屋外プログラムの実施が制約を受けやすい冬場の対策として「冬に何ができるか、屋内プログラムなどを検討中」と述べた。
国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長は、1時間当たり収容人数を従来の2倍に拡大したことで、平日で1日1800人、土日祝日で2200人まで受け入れられるようになったと説明。「資料の劣化対策のほか、リピーターにも応えられるよう衣服など展示物の一部入れ替えも行った。12月からは収蔵資料展も開催する」とし、活動の充実に意欲を示した。修学旅行などで来館する児童生徒を対象に、初歩的なアイヌの歴史や文化を学習してもらう教育プログラム「はじめてのアイヌ博」については、「利用が好調で、研究員や学芸員による展示資料の解説などが学校から好評を得ている」とした。
一方、アイヌ民族への差別の歴史に関する展示資料が少ないという指摘に対しては「さまざまな意見があるが、人権・差別に特化した博物館ではない」としながらも、「差別の歴史は既に展示物で触れているが、個人的にはもう少し厚みがあってもいいと思う」と見直しを示唆した。
財団によると、修学旅行や社会科見学など教育旅行で来場した小中高校は、11日までに341校(2万6185人)に上り、さらに今後、来年3月までに387校(4万2190人)が予定している。