札幌芸術の森美術館で開かれている北欧童話「ムーミン」の展覧会(11月3日まで)に行ってきた。かなりの人気だと聞いていたので平日で休みを取れる日を狙って足を運んだが、やはりその日も混んでいた。約500点の展示品は小説の挿絵原画がメインだが、浮世絵との比較展示や風刺画、原作者が来日した際に残したというスケッチなども興味深い。
それにしてもこれほど多くの人を引き付ける理由は何か。風光明媚(めいび)だが、ときに厳しい大自然に囲まれたムーミン谷でちょっと不可思議なキャラクターたちが織り成す日常に、手強い冬の寒さや雪ともうまく共存してきた道民は共感する部分が多いのかもしれない。
新型コロナウイルスの流行が続く中、ウェブ上でのアート鑑賞が話題だが、最近はあまり美術館や博物館に長居せず、売店で購入した図録を自宅でゆっくりと眺める人が増えているという。会場をぐるっと回ったら感動と図録をお土産に帰宅し、ソファで展示品を思い出しながらのんびりと世界観に浸る。コロナ時代の新しい鑑賞方法だ。
昨年、埼玉県で開業したムーミンのテーマパークもキャラクターと来場者が接触するショーなどは見合わせているが、記念撮影できる写真スタジオでは触れ合って見えるようカメラアングルを工夫しているという。
感染症とは無縁の穏やかな空想世界を扱う施設も、現実的な客の受け入れ方法を模索している。(輝)