苫小牧市民が文化活動の成果を発表する一大文化イベント、市民文化祭も新型コロナウイルスの影響を受けている。作品展示やステージ発表など多彩な行事を毎年、秋から冬にかけて市内各所で展開しているが、今年は規模縮小や中止を余儀なくされた行事も多い。関係団体の中には独自に発表や交流の機会を設ける動きもあるなど、コロナ流行下における文化活動の在り方が模索されている。
市民文化祭は、文化関係の団体でつくる実行委員会が主催、市と市教育委員会の共催。市制施行の1948年から毎年、欠かさず開いてきた。総合体育館や文化会館など市内各所で作品展示や交流大会、ステージ発表などを繰り広げており、昨年度は9月末から今年2月までに約20件の行事を実施。延べ約5400人が出展・出演し、各会場に同約1万3000人が足を運んだ。
しかし、今年はコロナ感染拡大の影響で、内容を大幅に変更する。予定行事数は10件で昨年度の約半分。10月11日に文化交流センターで開かれる市民俳句大会を皮切りに、文芸大会や演劇・音楽発表、作品展示、将棋大会などを行い、11月21日の市民文芸トークサロンで閉幕する。
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各行事は参加者の手指消毒やマスク着用などに加え、実施時間の短縮や一部内容の見直しなど、コロナ対策を徹底する。文化会館で10月18日に開かれる市民短歌大会は例年、昼食を挟んで1日がかりで行っていたが、今年は昼食時間を取らず短時間で実施する。同24、25日に総合体育館で行われる総合展示は、スタンプラリーや制作体験、書道パフォーマンスなど参加型のイベントを取りやめ、展示のみとする。
一方、市民合唱祭(中学生の部・一般の部)や市民吹奏楽祭、市民交流囲碁大会、市内4カ所の地区文化祭など行事計11件は、十分な感染症対策が難しいなどの理由で中止する。市民文化祭を担当する市教育委員会生涯学習課は「出演者や出展者のみならず、鑑賞を楽しみにしている人も多いので中止は心苦しいが、感染拡大予防のため」と理解を求める。
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中止になった行事を所管する関係団体の中には、独自に発表や交流の機会を設けるところも。苫小牧囲碁伝統文化普及会は市民対象の市民交流囲碁大会の代替として、同会が運営する囲碁教室の生徒に限定した交流大会を11月、市内2カ所のコミュニティセンターで計画している。
市民吹奏楽祭の中止を決めた苫小牧吹奏楽連盟は今月6日と20日に、市内の公共施設で連盟独自の発表会を開いた。吹奏楽に励む子どもたちのために、わずかな時間でも演奏機会を設けようという思いで企画された。換気や会場内の消毒、入場者を出演者の家族に限定するなど感染防止対策を徹底した上で実施した。
精いっぱいの演奏を披露した苫小牧東小学校ブラスバンド同好会の岩下仁子(さとね)さん(同小6年)は「小学校最後の年なのに演奏する場所がなくなってとても寂しかったけど、少しでも人の前で演奏ができて楽しかった」と笑顔。コロナ禍にあっても変わらない文化の大切さをかみしめた。 (姉歯百合子)