▶10「トイタ」 アイヌ民族の農耕とは

  • チキサニ通信, 特集
  • 2020年9月28日
山のイオル「穀物採取体験」では、ピパと呼ばれるカワシンジュガイの穂摘み具を使った体験も行う

 イランカラプテ(こんにちは)。季節は実りの秋、食欲の秋を迎えました。アイヌ民族はかつて、さまざまな秋の恵みをカムイに感謝しながら、狩猟や漁労、採集で得ていたと想像する方も多いことでしょう。確かにそうではあるのですが、アイヌ民族の暮らしで忘れてはならないのが農耕「トイタ」です。トイはアイヌ語で「土」、タは「~を耕す」という意味で、つまり農耕を意味します。

 白老でアイヌ民族の風習を記録した満岡伸一(1882~1950年)の著書『アイヌの足跡』には、アイヌ民族の農耕について「農耕業はすこぶる幼稚なもので、今から見れば農業としての価値を疑わせるくらいのものであった」と記されています。他のさまざまな文献にも、アイヌ民族の農耕は肥料を与えず、シカの角や木の枝で土を耕す原始的なものであった―と紹介されています。

 果たして本当にアイヌ民族の農耕は、原始的であったのでしょうか?。古くからヒエやアワなどの穀物を栽培し、「ピ」と呼ばれる高床式の倉庫に保管して、儀式の際の団子や酒の材料に利用していたのは周知の事実です。今から200年ほど前にはジャガイモやトウモロコシ、ダイコン、インゲン豆などを作っていたことも分かっています。また、14世紀から18世紀初頭にかけては、すき、くわといった鉄製農具を使用して本格的なうねを作り、畑作を行っていたことも近年の遺跡調査で明らかになってきました。

 気候や災害などの環境変化の他、本州から入って来た和人との関係など、アイヌ民族を取り巻く社会の変化なども考慮すると、アイヌ民族の農耕もおそらく変化を繰り返していたのでしょう。ステレオタイプのように「原始的」という言葉で片付けることはできないのかもしれません。

 しらおいイオル事務所チキサニでは例年9月下旬、山のイオル「穀物採取体験」を開催しており、今年は30日に予定しています。白老町森野地区で栽培したアワ、ヒエ、キビの採取を町内の小学生の他、一般の参加者に体験してもらう内容です。行事を通じてアイヌ民族の農耕「トイタ」を知っていただきたいと考えています。

 (しらおいイオル事務所チキサニ・森洋輔学芸員)

 ※毎月第2・第4月曜日に掲載します。

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