日本の65歳以上の高齢者が3617万人となり、総人口の28・7%を占めた。比率の高さは世界1位。いわゆる団塊の世代は全員が70代になった。敬老の日に向けて国が発表した数字。
高齢化社会の入り口に立って、働き手不足などを心配するのが役目と思っていたが、違った。高齢者とは自分のこと。時の流れは速い。過去が圧縮され近く感じるのが老いらしい。先日、ラジオからイギリスのロックバンド、プロコル・ハルムの「青い影」が聞こえオルガンの前奏が懐かしくて胸が熱くなった。1967年発売の半世紀以上前の曲。ビートルズ世代が高齢者。それが現実なのだ。
年金、医療や介護、孤独、転倒や事故。老後にはたくさんの不安がある。共に老いると言うはやすいが現実は難しいに違いない。生が別々に訪れるように老いも別々に進む。でも、家族や友人、近所と、互いの不安を和らげ合って過ごす生き方だってきっとある。
知人が、晴れた日の住宅街で見た、夫婦と思われる、80歳ほどの2人の散歩姿を教えてくれた。腰を伸ばして、ゆっくりゆっくり歩くおじいちゃん。後ろを歩く遅れがちのおばあちゃんの右手にはつえ。勧められたのか、左手がおじいちゃんのジャンパーのポケット付近をギュッと握り締めるのが見えた。小さな白い手の、力の入り具合が信頼の深さを表しているようで、心が温かくなったとか。
実践する先輩は、いる。(水)