中 日本CCS調査 中島俊朗社長 カーボンリサイクルの実証拠点へ CCSの装置活用

  • CCUS促進協総会より, 特集
  • 2020年9月24日
「苫小牧CCSは世界に誇れる」と中島社長

  苫小牧のCCS実証試験の目的は、二酸化炭素(CO2)の分離回収から貯留まで、一貫したシステムとして実証し、情報を広く公表してCCSへの理解を深めていくこと。設備の建設や操業を無事故無災害で達成し、安全かつ安心できるシステムであることを確認した。

   特筆すべきは地震に関連する不安を、収集したデータに基づいて化学的に払拭(ふっしょく)できたこと。胆振東部地震の発生も、貯留したCO2に影響はなかった。当初は圧入の際に微小な地震が起きるのではないかと懸念されたが、微小振動や自然地震も検知されなかった。地震国、火山国の日本でもCCSは安心、安全に実施できる。

   昨年11月にCO2圧入30万トンを達成し、現在モニタリングを継続している。30万トンは世界各地のCCSと比べて規模は小さいが、世界に誇れる特徴を備えている。分離回収に投入するエネルギー量は世界トップレベルの低さ。陸上から傾斜井を掘削し、海底地下に貯留したが、CCSとしては世界初のケース。モニタリングシステムも充実させた。

   さらに世界から注目されていることは、大都市部近傍エリアでCO2の地下貯留を進め、地元から一定の理解をいただけたこと。(現場見学会やブース出展など)情報発信活動実績は5万7000人余り。単純計算で苫小牧の人口3分の1が、何らかのイベントに参加してくれた。視察も昨年度までに50カ国、1400人以上が来日した。

   一方でCCSは課題もある。さらなるコストダウンや技術革新が必要。例えばCO2の分離回収だけではコスト高になるため、どう解決するのかが課題になるし、貯留自体も新たな価値にはならない。社会全体としてコストをどう負担していくのか制度づくりが必要だ。苫小牧では十分な安全配慮をして取り組んでいるが、地下の構造を使ったCO2の貯留に対し、権利を明確に定めた法律はない。保安や法的な整備も必要になる。

   その中でカーボンリサイクルはコストを補完する。副産品や新たに生産されるものの価値によって、コストを回収できる可能性がある。(CCS実証試験で)出光興産北海道製油所から頂いた「PSAオフガス」の組成は半分がCO2、残り40%が水素。CO2を分離回収装置で濃度を高めて地下貯留し、水素はプラント維持の燃料などに使っているが、カーボンリサイクルでは原料に利用できる。

   課題が混在することを認識しながら、苫小牧ではCCS、(CCSにCO2の有効活用を加えた)CCUS、カーボンリサイクルの実証拠点として次の段階に進む。カーボンリサイクルではCCS実証試験で設置した、分離回収や圧入の装置を活用できる。苫小牧の地でCCSと両方の実証拠点化、その先にある苫小牧産業の発展に全力を尽くしたい。

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