• ニュース, 夕刊時評
  • 2020年9月23日

  富士山が、昨年より32日早く「初雪化粧」をしたとのニュース。大雪では紅葉が進む。蒸し暑かった夏の終わりと思ったが、秋分の日のきのうも空には夏の雲。夜には突然の激しい雨。

   青空とゆっくり流れる白い雲、その手前を飛ぶ鳥やトンボを、ポカンと口を開けて眺めながら育った。雲の正確な名前はほとんど知らなかったが、形や色の違いは少し覚えた。にわか雨を降らせる雲の形や色、強い雨が降る前に吹く冷たい風、その風に揺れる木々の葉の色、近くの山が暗くなっていく様子は、今でも覚えている。季節の変わり目が分かりにくく、地球温暖化や異常気象が話題になる中で、スマホやゲーム機を見詰める時間の長い、今の子どもたちにはできない経験かもしれない。

   本棚に眠っていた小学館の自然観察シリーズ「雲」を久しぶりに開いて、美しく、時には恐ろしい雲たちのカラー写真を見直した。にゅうどうぐも、かみなりぐもと呼んでいたのは積乱雲だ。あまぐも、ゆきぐもは乱層雲。うろこぐも、ひつじぐもは高積雲。すじぐもは巻(けん)雲―。本の中の写真や文字と、かなり怪しい自分の記憶や知識をすり合わせた。脚の具合は良くないが、秋はゆっくりと雲を見たい。改めて思った。

   このまま静かに秋が深まり―とはいかないようだ。台風12号が北上中。稲刈りなど農作業への影響が心配される。油断はできない。雲行きに目を凝らしたい。(水)

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