胆振管内の定時制高校に通う生徒の生活体験発表大会があり、苫小牧東、苫小牧工業、室蘭栄の3校から参加した6人の発表を聞いた。新型コロナウイルス対策のため体育館での発表ではなく、事前に収録した映像の審査となったのは残念だったが、内容は心に響くものばかりだった。
衝突を繰り返す母と離れ、祖父母の家で暮らすことになった生徒はたくさんの「初めて」をもらったという。朝起きたらご飯があること、間違ったことをしたときにしかってくれること―。ほかにも、65歳からの再雇用に向け2級建築士を目指して入学した生徒、ラーメン店で終わらない洗い物に心が折れそうになりながらも客の喜ぶ姿がうれしいと語る生徒、人間不信は克服できていないけれど、努力は報われないなんて思ってはいけない、と言葉を絞り出す生徒―。原稿を読み上げる姿にぎこちなさはあっても、懸命な気持ちがひしひしと伝わってきた。
菅内閣は「国民のために働く内閣」だという。わざわざ「国民のために」と言わなければならないほど、これまで国民の方を向いていなかった自覚があるということか。国民の生活感覚からずれた政治への反発が、地方議員出身、非世襲の「たたき上げ」首相の好感度につながっているのかもしれない。どんな人にも大切な日常があり、葛藤も、かなえたい夢もある。国民一人一人の願いに向き合う新政権であってほしい。(吉)