(15)ウトナイ湖野生鳥獣保護センター SNSに活路 動画で解説も

  • 変わる日常 コロナ新時代, 特集
  • 2020年9月21日
コロナ対策で望遠鏡の使用を中止しているウトナイ湖野生鳥獣保護センター

  豊かな自然に囲まれた苫小牧市のウトナイ湖野生鳥獣保護センターも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。救護セミナーや自然観察会などの行事はすべて中止となり、関係者は「来場者との距離ができた」と肩を落とす。一方で市民とのつながりを保とうと、インターネット交流サイト(SNS)を活用するなど、新たな取り組みに力を入れている。

   同センターは、コロナ禍で3月4~31日と4月18日~5月31日の2度にわたり休館。今年度の入館者数は8月末時点で、前年同期比約3割減の1万9084人にとどまる。客足は徐々に戻ってきたが、コロナ以前の水準には届いていない。旅行などの団体客の受け入れはストップしている。

   イベントも相次ぎ中止となった。タンチョウやコウモリ、スズメバチなどの野生生物について学ぶ救護セミナーのほか、市民向けに初めて企画したバックヤードツアー、子ども向けの獣医師体験も開けなかった。センター長の望月樹さん(61)は「センターの活動内容を知ってもらう良い機会だったのだが」と残念がる。

   館内では望遠鏡の使用を中止し、パズルやハクチョウの縫いぐるみも撤収した。図書の貸し出しもやめた。しばらくはそんな期間が続きそうで、望月さんは「お客さんにウトナイ湖について説明したいが、今はそれができない。スタッフとお客さんの接点が減ってしまった」と嘆く。

   同センターの獣医師、山田智子さん(41)は「自粛期間中は傷病鳥獣の搬入が少なかったように感じる」と指摘。実際、3~5月の搬入件数は14件と前年同期の24件に比べ約4割減だった。緊急事態宣言の外出自粛を踏まえ、「傷病鳥獣を発見する機会が少なくなったのでは」と推測する。

   一方、山田さんが講師として市内の小学校に直接足を運んで行う「こころの授業」は今年度、開催予定も含めて11校に。前年度の16校よりは減ったが「今年の開催はないと思っていた。子どもたちの反応を見ながら話をできるのはありがたい」と目を細める。

   新型コロナ流行下とはいえ、多くの人に自然の豊かさを知ってもらうための取り組みは続く。観察会の代替で、ウトナイ湖畔の散策路にQRコードを付けた看板を設置。スマートフォンを通じ、野鳥や花について解説する動画投稿サイト・ユーチューブのページにつながるようにした。望月さんは「家族連れなどに利用され好評」と手応えを語る。

   4月にフェイスブックの公式ページを開設して週に4~5回、自然情報やセンターの活動などを発信。7月には、かつて館内で読み聞かせてきた紙芝居や野鳥の生態情報を動画で投稿した。望月さんは「家に居ながらウトナイ湖に触れられるよう、リアルタイムで情報を発信してきたい」と意欲的。コロナを契機に始めたSNSの発信で可能性を広げている。

  (平沖崇徳)

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