自民党の総裁選に圧勝した14日の夜、菅義偉新総裁がテレビのニュース番組で質問を受けながら、目をクシャッと細くする、不思議な表情をしていた。
笑うでもなく、もちろんにらむとか怒った表情でもない。照れ、はにかみなのか。暗い目で威圧していた官房長官会見の時には見せたことのない表情だった。思いついてまねをしてみたができない。失礼ながら「そんな質問しかできないのか。もういいかげんにしなさい」という言葉を思い浮かべると少しだけ似てきた気がした。官僚の作り上げた縦割り行政や既得権益、悪しき前例主義をぶち壊す―と唇に力を入れて繰り返したあたりでいつもの表情に戻った。
「安倍政権の継承」には批判も多いが、周囲や裏方にまで不本意な作業や答弁を強いた、脇の甘い前任者に比べれば―という期待の声はある。まずは注目したい。
首相指名選挙の後、組閣が行われるのがいつもの流れ。大臣の椅子を目指す人たちがドキドキして過ごし、笑顔で電話を受けて首相官邸に向かう様子をテレビで長く見てきた。今回は時間が繰り上がり昨夜はテレビの速報がにぎやかで、朝刊には新閣僚候補の顔写真や名前が並んだ。新型コロナウイルス対策は待ったなし。1分でも早く資料に目を通して勉強を―という狙いなのか。これを読んで、ここを読んでと指示されても答弁に詰まるような大臣の姿も見続けてきた官房長官の流儀か。(水)