トップが変わるという、ねずみ年のジンクスは現実となった。年の初めは自民党総裁任期の延長話さえあった安倍晋三氏。政治姿勢は支持しないし、幾つもの疑念への説明や解明の努めを免じる気もないが、体調不良で2度も首相を辞す無念の深さは察しようもない。癒やしてほしい。
総裁選は「安倍政権の継承」を掲げた菅義偉氏が圧倒的な支持を集めて勝った。あすの臨時国会で首相に選ばれる。今後の焦点は党執行部や閣僚人事と残任期が1年余の衆院解散総選挙の時期か。
菅氏は本道の重要課題に影響力を持つ。本来は今年度が目標だった本道の訪日客年間500万人の観光政策、新千歳空港の発着枠拡大と民営化、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の実現などを強く後押しした。太いパイプを持つ鈴木直道知事にとっては心強い、だけで済むこともないだろう。
一方で気になるのは、継承する安倍政治だ。安倍首相はレガシー(政治的遺産)がないと言われるが、集団的自衛権に係る憲法の解釈を閣議決定で変更したり、憲法で定めた手続きにのっとった野党の国会召集の求めに応じなかったり、民主主義や憲法を踏みにじる悪い前例を残した。官僚による公文書の改ざん・破棄、忖度(そんたく)行政の横行。官邸が行政をゆがめたとの指摘もあった。
菅氏はどんなリーダーか。安倍政権のまさに中枢だった事を踏まえて、ともかく注視する。(司)