新型コロナウイルスの流行で、苫小牧市内のホテルはバイキング形式の食事提供に頭を悩ませている。感染者数が拡大した当初は感染リスクの高さが指摘され、一斉休止を余儀なくされた食事スタイル。最近は利用者の要望を踏まえて再開に踏み切る施設と、代替策を継続する所とに対応が分かれている。いずれの施設も感染対策を徹底し、安全を最優先させながら利用客の笑顔を引き出している。
グランドホテルニュー王子(表町)は5日、16階のレストラングランビューでランチバイキングを再開した。3月中旬から休止していたが、利用者から再開を求める声が相次いでいた。
好きな食べ物を自由に選ぶバイキングでコロナ予防、「密」の回避を徹底させるため同ホテルは料理を取る際、利用客にマスクとビニール手袋の着用を求め、席を約40席から14席に間引きした。同ホテル料飲部の野上強志統括マネジャー(41)は「安心安全が第一」と強調。「入場できるグループも最大6組とし、トングも定期的に交換している」と安全面への配慮をアピールする。
ホテルウィングインターナショナル苫小牧(同)も、3月中旬から休んでいた朝食ビュッフェを7月に再開。料理を器に小分けし、客同士が対面しない座席配置にするなど工夫を凝らす。会場入り口で利用客の検温を行い、料理を運ぶ際は手袋着用などを徹底。菅野健太支配人(36)は「利用客から『好きな物を食べられるようになってうれしい』という声も多い」と笑顔を見せる。
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一方でバイキング再開に踏み切れないホテルも多い。スマイルホテル苫小牧(錦町)は休止したバイキングの代わりに7月から事前予約制で定食を提供。2カ月近く宿泊する長期滞在者もいるため、飽きられないメニューになるよう試行錯誤する。
席の間隔を空けるなど感染防止を最重視しており、藤田裕行支配人(43)は「『バイキング形式に戻してほしい』という声もあるが、まだコロナの収束時期が見えない」と肩を落とし「状況が落ち着き次第、(バイキングに)戻したい」と話す。
東横イン苫小牧駅前(王子町)も2月末から朝食バイキングを休止中。従業員がおにぎりやおかずなどを個別に皿に盛り付け、ラップをして宿泊客に提供し、宿泊部屋でも食べられるようにしている。客同士が密にならない配慮だ。久万幸代支配人(45)は「感染予防を徹底させるため当面、朝食の個別提供を続けていく」と言う。
市内ホテルはコロナ禍で観光客が激減したが、夏前から出光興産北海道製油所の大規模定期補修工事などのビジネス需要で一定の稼働率を保つ。
苫小牧ホテル旅館組合の佐藤聰組合長は「バイキングだと人件費を削減できるが定食に切り替えると、稼働率が高まるほど人が必要になる」と指摘する。
業界的にはできる限りセットメニューなどで対応することを推奨しているが例年秋以降は稼働率が低下するため、各ホテルの経営判断と感染防止対策に食事提供の在り方を委ねているのが実情だ。
(室谷実)
ランチバイキングを準備する従業員=グランドホテルニュー王子