制御

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年9月5日

  マインドコントロールという片仮名語を久しぶりに読んだ。確かオウム真理教の教祖が、信者の若者らを特定の行動へ誘導した行為がそう呼ばれた。

   後志管内寿都町の片岡春雄町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場候補地選定の「文献調査」受け入れ検討を表明、道や近隣町村に衝撃が広がっている。「マインドコントロールされている」は、検討を知って反対の署名集めを始めた町民を評した、町長の言葉だ。

   核のごみは、放射能が極めて強い廃液。ガラスで固めた固体で表面の放射線濃度は1時間当たり約1500シーベルト。20秒浴びただけで100%の人が死ぬ量。人が近づいても安全とされる放射線量になるには、10万年かかると報道されていた。産業への影響だけでなく、搬入作業のたびにおののき、もし大地震や大規模な火山活動があれば10万年もの間、不安を感じ続けなければならない。そんな廃棄物を恐れる町民や近隣町村、全道の漁民の恐怖を10文字ほどの片仮名で片付けていいとは思えない。

   廃棄物処理のめどもなく進められた原子力発電というものの怖さを改めて突き付けられる。知事と町長の話し合いに続き、きのうは経済産業大臣と知事、町長と地元漁協の話し合いも行われた。週明けには町長による町民説明会も始まる。誰が、北海道や私たち道民の未来を決め、制御するのか。しっかり考え、見守りたい。(水)

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