むかわ町の建設水道課技術グループに勤務する西尾礼央奈さん(24)=千葉県出身=は、胆振東部地震から約1カ月後、同町のボランティアに参加したことがきっかけで、今年の春、町職員になった。その根底にあるのは「力になりたい」という思い。「まだ駆け出しだが、専門的な知識を深めて住民の意見を大事にしながら日々の業務に励む」と決意を語る。
初めて北海道を訪れたのは小学生の時で、豊かな自然に「魅力を感じた」。震災があった2年前は千葉工業大学で建築都市環境学を学ぶ3年生。被災した3町のことは何も知らなかったが「何かお手伝いをしたい」と考え、むかわ町のボランティア受け入れ開始とともに来道。1週間ほど家財道具の片付けなど力仕事に携わったという。
翌年3月、別の目的で来道した際も同町を訪れ、被災状況を示すマップ作りに協力した。建築業界での就職を目指していたが、ボランティア経験から「むかわの復興を支えたい」と一念発起。2020年度の町職員採用試験に合格し、今年4月から復興ボランティアを経験した職員として働く。今の主な担当はアパートの新築や鵡川高校野球部寮の再建など。まちとの関わりに「住民同士の距離が近く、気さくでいい人ばかり」と述べ、「仮設住宅で暮らす町民もまだいる。業務の重要さに責任を感じている」と気を引き締める。
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地方の小さなまちにとって、コミュニティー縮小を招く人口減少は大きな課題だ。大きな被害を受けた東胆振の3町は震災以降、町外転出者の増加という問題が顕在化。むかわ町は、都会から地方に移りたいという人に対し「むかわ町の魅力をどうPRしていくかが重要になる」と訴える。
安平町は地域活性化に欠かせない若年層や子育て世代も住みやすい環境をつくろうと、19年度から町民の挑戦を応援するプロジェクト「カイタク事業」をスタートさせた。インターネットで資金を集めるクラウドファンディングを利用し、初年度は空き家を活用したコミュニティースペースを開設。犬ぞりのアクティビティーも開発するなど、新しい観光資源づくりを推進する。
厚真町は16年度に町内起業や新規就農を支援する「ローカルベンチャースクール」を立ち上げ、転入者の獲得を狙う。町外のさまざまな人材が定住しやすい環境をつくることが、新たなまちづくりと人口減少への歯止めに必要と考えるからだ。
震災から2年を迎え、同町の担当者は「このまちに住む人を着実に増やす取り組みを推進。震災前の人口規模を目指したい」と今後の復興への思いを語っている。
(松原俊介、小玉凜)
(おわり)