震度6強の揺れを観測したむかわ町。鵡川地区市街地にある中央通りの商店街では、倒壊や半壊で廃業せざるを得ない店舗が数件あった。人口減少や後継者不足などの課題を抱える中で巨大地震が発生。追い打ちをかけるように新型コロナウイルスが流行するなど逆風のさなかにいるが、商店街関係者は辛抱強く復興への道筋を模索している。
町によると、胆振東部地震では町内30店舗が全壊や大規模半壊などの被害を受け、9軒が廃業。商工会の会員数は今年3月末時点で前年度よりも13減の202となった。高齢化などを理由に閉店したケースもあるという。
一方で仕事を続ける店もある。たい焼き店「いっぷく堂」は震災で自宅兼店舗が全壊し、昨年4月に町が松風地区に設置した仮設店舗で営業している。店主の工藤弘さん(67)は町内外から訪れる客との触れ合いを楽しみながら店を続けているが、無償で入居できるのは2022年2月末まで。刻々と迫る期限に「今後の見通しが分からないと不安」と漏らす。
町商工会の副会長を務め、同じ仮設店舗で営業する白田電機商会社長の白田忠美さん(62)はこの2年間で「もともと多かったさら地がさらに増えた」と指摘。「今は夢を持てるまちづくりが必要だ」と訴えた。
町産業振興課はこうした現状を踏まえ、仮設店舗の将来や商店街の在り方を「町民と共に地域再生を検討しながら方向性をまとめたい」と語る。
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復興への歩みを進める上で、突然発生した新型コロナ禍は大きな障壁となっている。末広の「潮騒ラーメン」本店の五十嵐照美さん(60)は、「生活が元に戻りかけていた中でコロナが流行。道が緊急事態宣言を出した2、3月ごろは本当にひどかった」とため息交じりに話す。
町商工会は今年1月、商店街再生に向けて会員らで組織する「中央通り検討委員会」を設置。コロナ禍で直接集まって話し合うのも難しいが、沼田智明事務局長(56)は「交流人口を増やす取り組みを考えたい。商店街ににぎわいを創出できたら」と展望する。
大豊寿司(文京)は、先代から経営を引き継いで3年後に被災。店主の鈴木佑介さん(34)は「店も被害を受け、一時は店じまいを考えたけど常連客らの応援に背中を押された」と言う。同店はししゃもずしが名物で、水揚げシーズンになると町内外から客が集まる人気店。まだ逆風はあるが、「この店と名物を守り、お客さんを呼ぶことが復興につながる」と力強く語った。
(平沖崇徳、高野玲央奈)