記録

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  • 2020年9月3日

  苫小牧港の公園にテントを張り、中でくつろぐ人たちの写真。子ども2人はマスクを外し、笑顔を向けている。大人はマスクを着けたままで表情は分からないが、爽やかな外の空気に触れ、気持ち良さそうだ。

   題名は「安らぎの港」。苫小牧港開発などが主催する「大好き!苫小牧港フォトコンテスト」に寄せられた写真だ。審査員長の写真家、竹本英樹さんは「マスクを着用している写真は、今年の記録としても残しておかなければならない」と指摘した。そして「コロナ禍であっても、苫小牧港が市民にとって安らぎの場所であることが伝わる」と高く評価した。

   本紙に日々掲載している写真も、ほぼすべての人がマスク姿だ。人物に焦点を当てた記事は、撮影時だけマスクを外してもらっている。緊急事態宣言下の4~5月、さまざまな立場の人にコロナとどう向き合い、乗り切ろうとしているのかを聞いた「コロナに負けるな」を連載した際は、「撮影のためマスクを外してもらいました」と断り書きも添えた。

   どんな人なのかも、表情も分からないマスク姿の写真を載せる意味があるのか、と悩むときがある。しかし、それもまた記録なのだと知らされた。もはや「コロナ前」の生活に完全に戻ることはないと専門家は言う。2020年の新聞をめくり、この年はそうだったね―と、過去の記録として語れる日はもう来ないのだろうか。(吉)

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