地殻の変動や火山活動を地震発生の原因として認識はしているものの、実はよく分からない。防災の日のきのう、各地の訓練の報道を見ながら思った。
日本では「ナマズが騒ぐ」と言ったようだが、アイヌの言い伝えは違う。古老らからの聞き取りをまとめた、更科源蔵著「アイヌの民俗・下」(みやま書房)によれば、胆振などでは「天の川のカジカが腹をへらすと暴れて地震になる」と言われた。他の多くの地域は「国造りの神が大きなアメマスの上に大地を造ったため腰がくたびれて動くと大地が揺れる」。アイヌ=人間が、炉の端に小刀や火箸を突き立て「腰骨押さえたぞ」と言うとおとなしくなるとか。
火山では、有珠山噴火の言い伝えが紹介されている。詞曲(ユカラ)として残るのは1822(文政5)年の噴火。有珠の集落は全滅し、渡島管内の長万部に逃げた者だけが命拾いした。その時、虻田の首長は祭壇に向かって祈り続けて避難しなかった。噴火がおさまり人々が帰ってみると、依然として祭壇の前に座り続けているので、「エカシ(長老)!」と言って肩に手をかけると、グザッとくずれてしまった。噴火の鎮静を祈ったまま灰になったそうだ―。
最大震度7の胆振東部地震から間もなく2年。厚真や安平、むかわでは今も復興作業が続く。午前3時7分に始まった強い揺れを忘れない。大昔の北海道も想像しながら、改めて防災を考えた。(水)