「皆さん、こんにちは。『つながろう厚真』の時間です」―。
厚真町役場に設けられたラジオブース内に柔らかな声が響く。同町社会福祉協議会の職員がパーソナリティーとなり、平日昼間に放送している30分間のラジオ番組のスタートを告げる定番のあいさつだ。
同社協は胆振東部地震で大きく変わった地域コミュニティーを住民自身の力で再構築しようと今年4月、「地域支え合いセンター」を開設した。しかし、新型コロナウイルスという大きな壁に阻まれ、活動機会は激減。それなら”声”でつながろうと、あつま災害エフエムで5月13日に始めたのがこの番組だ。
内容は社協のお知らせやクイズ、自宅でできるストレッチ体操、町民をゲストに招いた情報発信などさまざま。先月、町民が発信したい思いを番組で紹介する「ラジオメッセージ大作戦」を新たに発案。8月下旬の放送で応募を呼び掛けたばかりだ。
パーソナリティーを務める同社協職員の村上朋子さん(49)は「今、大切なのは人とつながり合いながら、自分が住みよい地域を新たにつくろうとする意識」と強調。今回の町民メッセージ企画を「顔を合わせなくても、どこかで誰かとつながっていると感じられるような試みにしたい」と話す。
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むかわ町と安平町の両社協も地域コミュニティー再生という同じ課題に立ち向かっている最中だ。
むかわ町では6カ所に地域サロンがあり、このうち一部は町民ボランティアが主体的に運営する。毎回多くの町民を集めて活動してきたが、現在はコロナ禍で休止中。社協担当者は交流機会が減ることで「地域を再生しよう―という町民の気持ちが薄れてしまうのではないか」と不安を抱えつつ、さまざまな取り組みを模索する。
安平町は7月から、社協が中心となり自治会と合同で高齢者宅を訪問し、困り事などを聴き取る活動を開始。町民が集まる場も徐々に再開し始めている。
町内でNPO法人とあさ村を運営する”村長”の青木明子さん(52)は「人とのつながりなくして、災害は乗り越えられない」と今年6月、JR遠浅駅に近い場所で地域コミュニティーサロン「みんなの家」を開設。災害などに備え、日常的に人々がつながり合う場として毎週木曜日に開放している。今はコロナへの不安から「来たくても来られない人も多い」とみており、SNS(インターネット交流サイト)なども活用しながら「地域への関心が薄れないよう発信を続けていきたい」と思いを語る。
(姉歯百合子、小笠原皓大)