新型コロナウイルスの感染が苫小牧市内で初めて確認されてから半年が過ぎ、市にはこの間1100件以上の問い合わせが寄せられた。流行当初は感情的な苦情などが多く、個人情報のさらなる開示を求める声も殺到。時間がたつにつれてこうした声が減る一方、国や道、市の対策などへの意見、質問などが増えた。世情に合わせて市民の心理も変化していることが、問い合わせ件数の推移からもにじみ出ている。
市危機管理室がまとめた、新型コロナ関連で同室が受けた苦情や相談などの問い合わせ状況。市内で初の感染が判明した2月22日から同25日までは夜間、休日に庁舎管理人が受けた電話もほぼコロナ関連とみられるが、内容の詳細を把握していないため、「未分類」として統計に入れた。3月4日以降は相談電話の専用ダイヤル、コールセンターが対応した。
2~7月の半年間で問い合わせは1121件。コロナの流行が始まった2月は125件で、「未分類」が約50%の62件、感染者情報開示を求める声が36件と約29%を占めた。特に市内で初めて感染者が出た2月22日は土曜夜、岩倉博文市長が記者会見で発表以降、市民からの電話が鳴りやまず、同日だけで「未分類」は39件に達した。
当初は「どこから感染者が出たのかもっと詳しく教えて」「市は情報を隠しているのでないか」などの声も多かったという。市は個人の人権を尊重しながら感染予防に必要な情報は出していることに理解を求めたが電話口で感情的になる人もおり、同室も「市民の方も最初は不安だったと思う」と分析する。
問い合わせ件数は3月、4月と右肩上がりだったが、道の緊急事態宣言(2月28日)などを受け、「冷静に受け止めた方が増えていった印象」と説明する。市内での感染者判明も2月の5人に対し、3月、4月と1人ずつだったこともあり、情報開示は3月が約10%、4月は約4%にとどまった。
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問い合わせ内容は国や道、市の対策、世相などが敏感に反映されている様子。マスクの品薄が続いた3月は「マスクはどこで買えるのか」などの質問が4分の1ほど。公共施設の休館や再開などに伴う問い合わせも4分の1弱を占めた。
政府がコロナ対策の現金給付を決めた4月、当初は内容が定まらなかったこともあり、給付金関連のみで半数近くに上った。3、4両月は健康相談なども約3割。「コロナを防ぐにはどうしたらいいか」などの声も多かった。5月以降はコロナのまん延を示すように、市民も慣れか諦めかなどは不明だが、問い合わせ自体は減少傾向だ。
一方で、7月末に市内企業が従業員の感染を公表すると、再び市民からさらなる情報開示を求める声が相次いだ。デマや誹謗(ひぼう)中傷もなくならず、同室は「コロナはどこでも、誰でもなる可能性がある。『誰がどこで感染した』と個人に向くのではなく、自分の身を守るため行動してほしい」と強調している。
(コロナ検証班)