15年ほど前、岐阜県にある核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)東濃地科学センターの深地層研究所を視察したことがある。同機構いわく「地層科学研究の拠点」で宗谷管内幌延町にも同様の地下施設があるが、案内してくれた職員が「ここが高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分場になることはあり得ない」とことさらに強調していたのを思い出す。「あくまで研究施設ですから」「なし崩し的に処分場になるのでは」―。当時、完成間近だった施設への関心が強く、押し問答みたいになった。今もセンシティブな問題だ。
原発の使用済み核燃料から出る核のごみの最終処分場選定で、後志管内寿都町は第1段階に当たる国の「文献調査」への応募を検討している。急展開に各方面から不安の声が上がる中、知事は第2段階のボーリングなど「概要調査」に移行する場合は反対を表明する考えを示した。瞬く間に全国ニュースとなり、渦中の寿都町長は「一石投じた」と鼻息が荒いが多くの道民は困惑している。厳しい財政や人口減の見通しが背景にあるとされるが慎重に検討すべきだ。北海道には「(核のごみを)受け入れ難い」とする条例があるもののそれだけでは心もとない。機先を制するように核のごみを一時保管する青森県で、県内を最終処分場にしないとする宣言を盛り込んだ条例制定を求める市民団体が立ち上がった。(輝)