新型コロナウイルスの収束が見通せない6月22日、北海道観光振興機構の会長職に就いた。「コロナとの闘いは長い道のりになる。コロナ危機による社会意識の変化を、北海道の魅力を高めていく契機にする必要がある」と会員に訴えた。
全国的に再び感染が拡大し、観光産業の苦境は続いている。それでも「コロナ禍によって、北海道の自然が毀損(きそん)されたわけでも、ダメージを受けたわけでもない」と力を込める。「どうみん割の人気で改めて旅への欲求が高まっていることが分かる」と指摘し、回復は「まず身近な道民、そして国内からの旅行者、時間はかかるがインバウンド(訪日外国人客)―の順で、切れ目のない需要を喚起させる必要がある」と時間軸を追った戦略づくりを重視する。過密、集中のコロナ対策が求められる中「広域分散の北海道はそれ自体が魅力に変わる」と言い、安全・安心な旅の先進地として「新北海道スタイル」の北海道をアピールすることで、海外に向かっていた旅行需要を取り込みたい考えだ。
量から質へと旅行スタイルも変化する。武器として7月12日に白老町にオープンした民族共生象徴空間(ウポポイ)と、来年開かれるアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)を挙げる。ウポポイは修学旅行や教育旅行先としても期待され、「共生に象徴されるアイヌ文化を発信する拠点ができたことは大きい。その魅力を感じ、釧路市阿寒やほかの地域のアイヌ文化に触れるきっかけに」とし、ATWSは「自然や異文化体験、アクテビティーなど、消費効果の高さと同時に、北海道らしい空間を生かせる新しい旅のスタイルになる」と期待。今後、道内7空港の民営化を担う北海道エアポート(HAP)との連携を強化し、北海道の魅力をアピールする観光戦略を進めたい考え。
社会人となり50年余り。半分は行政マン、残り半分は大学の研究者として一貫して「地域経済の活性化。とりわけ北海道の開発・発展に取り組んできた」。釧路公立大の地域研究センター長、学長として海外での経済協力活動や地域政策、実践的プロジェクトを数々手掛けた。「観光産業は裾野が広く、事業者のためだけのものではない。観光が自分たちの生活を豊かにしてくれていることに目を向け、需要を回復させる努力をみんなでしていくことが、地域を魅力あるものにしていく」と道民の支援を改めて求めた。
(釧路新聞)