戦争に関わった動物といえば、人や物資の輸送に駆り出された軍馬。しかし、もっといろいろな、大小の動物たちも戦地に連れ出され、犠牲になった。
秦郁彦著「旧日本陸海軍の生態学」(中公選書)には「軍用動物たちの戦争史」の章がある。冒頭に読み人知らずの歌が紹介されている。「久びさに軍馬が夢にあらわれて かなしきまでの眼差(まなざし)をする」。終戦直後、5000頭の軍馬の銃殺、撲殺を命じられ、般若心経を唱え引き金を引いた人の苦悩も紹介される。
ウシやゾウなども輸送や橋の工事現場に動員された。イヌやハトも戦地に運ばれたが、その数や任務に関する公的な記録は少ないという。軍用犬は米軍の記録では見張りや偵察、伝令や地雷探知に投入されたとあり、日本軍も同様かもしれない。軍用犬の存在が広く認識されたのは、1935年の小学校国語読本によるという。「満州事変の最初の夜の事(略)軍犬金剛・那智はいよいよとつげきとなると敵軍の中にとびこみ、死物ぐるいでかみつき」。2頭は死んで発見されたが「口には敵兵の軍服のきれはしをしっかりくはえていました」と美談に仕立て上げられ勲章が贈られて死後も子どもたちの戦意発揚の材料になった。
人間だけでなく、人間に綱を握られて進み、命を失った動物たちの無念も想像してみる。反省は進んだのだろうか、考えてみる。きょうは75回目の終戦の日。(水)