④彫刻家2人のコラボ 成田亨 『キングジョー初稿』1967年(青森県立美術館蔵) 大森記詩 『Training Day―Patchwork Super Robot―』2020年(作家蔵)

  彫刻家として活躍する一方、映画「ゴジラ」を皮切りに特撮美術の分野で活動を始めた成田亨(1929―2002)は、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」というウルトラシリーズ初期3作(1966―68)において、ヒーロー、怪獣、宇宙人、メカなどのデザインを手掛け、その造形的な基礎を作り上げた。本展で紹介している「ウルトラセブン」に登場する「キングジョー」は、日本初の合体・変形ロボットとして知られる。   

   世代は異なるが同じく彫刻家の大森記詩(1990―)は、自らが幼少期から慣れ親しんできたというプラモデルのパーツを素材とするシリーズ「Training Day」を発表。戦後から現在に至るまで、極東で独自の発展を遂げてきたプラモデルの「プロダクト/メディア」としての特異性に着目する大森は、これを「架空の断片」という自身の彫刻感と交差させ、アサンブラージュ(立体コラージュ)の手法を駆使した彫刻作品としての提示を試みている。

   彫刻家としての力量を発揮することで「怪獣=化け物」という固定観念を覆し、大衆文化と純粋芸術の境界を超えて影響を与え続けた成田亨。その数々の作品が持つ象徴性に触発されてきた大森は、本展を機に「キングジョー」へのオマージュ作品を制作している。世代を超えて実現した二人の彫刻家のコラボレーションは、多くの人々を魅了するに違いない。

  (苫小牧市美術博物館 学芸員 細矢久人)

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