(7)中学校で部活動地域移行始まる チーム合同化進む 指導者不足など課題も多く

  • この一年 2024, 特集
  • 2024年12月25日
中学校の部活動の地域移行1年目。生徒からは好評だが課題も多い

  苫小牧市の中学校で今年度、部活動の地域移行が始まった。国のガイドラインに基づく取り組みで、教職員の負担を減らすほか、専門性の高い指導を提供する目的。2028年度までに完了させる計画で、「部活」が学校から切り離される「クラブ化」に向かっている。

    ◇

   市教委が掲げる目標は、陸上や水泳など個人競技は完全移行、軟式野球やバレーボールなど団体競技は拠点校方式の採用。個人競技は以前から地域クラブ活動が盛んで、大きな変化もなく順調に進んだ。団体競技は、種目ごとに段階的に移行しており、このうち軟式野球は比較的スムーズに移行が進んだ。

   市内の中部に2チーム、東部と西部に各1チームの計4チームに分類した。2~3校で合同チームを組み、平日のうち4日間、土・日曜はどちらか1日の週5日間で活動している。

   このうち啓北中、光洋中、明倫中の中部(1)チームは、啓北中を拠点校として今シーズン開幕。しかし、サッカー部も同校を拠点校として活動しているため、夏期は光洋中のグラウンドをメインに利用した。

   生徒からは「練習仲間や他校の友達ができて楽しい」「今まで以上にモチベーションが上がる」と好評だ。指導する教員も「他校の部員も増え、指導の幅も広がり、新鮮な気持ち。生徒がこれまでと違う楽しさに満足している」と手応えをつかむ。

   一方、生徒からは「雨や雪の日は練習場所まで移動が大変」「バッティングなどの順番が回って来るのが少し遅くなった」との声も寄せられるなど、課題も多い。

    ◇

   バレーボールなど他の球技では移行が進まず、従来の学校単独チームのままだ。理由の一つとして、専門知識を持つ指導者が少なく、複数校の生徒を集めて指導すると、手が回らなくなる可能性があるため。拠点校やクラブ化の実現には、部員だけではなく指導者の確保も大きなポイントになる。

   各中学校で開かれた保護者説明会では賛否の声が飛び交う。「子どもの夢をかなえるために、協力することが親の役目だ」と肯定的な意見を述べる保護者もいるが、部活動がクラブ化することで、指導者への「謝礼」や生徒の送迎などの負担増を懸念する声は多い。

   初の試みとなった地域移行1年目は、決して順調に進んでいるとは言えない。来年度は拠点校方式の継続に加え、競技によっては新規クラブチームの参入も予定される。学校と地域が連携し、教員の負担削減や子どもの「やってみたい」を後押しするため、市教委や各クラブの挑戦が続く。

 (富樫陸)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。