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  • 2024年12月23日

  昭和の高度成長期、女性はクリスマスケーキに例えられ、25歳を過ぎたら「売れ残り」と言われた。結婚を機に仕事を辞め「寿退社」と祝われた。

   専業主婦を念頭に、保険料を払わなくても老後に基礎年金を受け取れる「第3号被保険者」の制度がつくられたのは、専業主婦世帯が共働き世帯よりはるかに多かった1980年代。注目を集める「103万円の壁」は両者が拮抗(きっこう)する90年代。共働き世帯が専業主婦世帯を倍以上も上回る今日、制度の前提が大きく異なるのだから、政治状況にかかわらず見直されて当然だと思う。

   与党は2025年度税制改正大綱に123万円への引き上げを盛り込み、24日も国民民主と協議を続けるというが、壁を巡るやりとりがゴルフに例えられていたのはかなり違和感があった。国民民主が「グリーンも全然見えない距離しか飛んでいない」と言えば、自民は「グリーンがどこにあるのか教えてほしい」と応じる。178万円の引き上げ目標に対して、どの辺りなら折り合いを付けられるのかの比喩なのだろうが、当事者にとっては今まさに年収の壁を超えないよう働き控えをしている時期。接待ゴルフが幅を利かせた80~90年代のような例えは共感を呼ばないと思うのだが。(吉)

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