白老町は今秋以降、北海道栄高校(白老町緑丘)の移転問題に揺れた。同校を運営する学校法人京都育英館(京都市、松尾英孝理事長)が今年9月、同じく同法人が運営する北洋大学キャンパス(苫小牧市錦西町)に、早ければ来年9月にも移転する方針を示した。同17日に松尾理事長らが町役場を訪れ、大塩英男町長らに方針を伝えたが、町側は「寝耳に水」と驚いた。大塩町長らは10月17日に京都市内の同法人を訪れ、移転しないよう求める要望書を松尾理事長に提出するなど対応に追われた。両者の意見は平行線をたどっている。
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松尾理事長ら法人側は移転の背景として、校舎の老朽化や生徒の減少を挙げ、苫小牧に移す必要性を説明している。法人内で高大連携の新しい教育体制を整え、「選ばれる学校」を目指す狙いもある。北海道栄の木村匡宏校長は移転方針について「町民の理解を得るのは容易でないが、苦渋の決断であり、断腸の思い」と訴える。
一方、同校の移転が実現すれば、白老町にとっては痛手となる。若年人口の減少がさらに加速する懸念がある他、同校と取引してきた地元の食品、清掃、整備など各関係業者にとっても損失。経済、文化両面で大きな打撃が見込まれる。
大塩町長や町教育委員会、町議会、町内会連合会など計12団体の連名でまとめた要望書では、「将来的な町の存続にも関わる問題となる可能性もある」と指摘する。同校について「地域コミュニティーの維持発展においても極めて重要な存在」と強調し、「若者の学びやとして地域と共に歩み続け、次世代にわたり持続可能な地域社会を築いて」と移転方針に撤回を強く求める。
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9月に保護者説明会を開いたが、その後は現在に至るまで移転に関し、保護者への説明や報告はないといい、不満を募らせる家庭は多い。同校2年生の母親(40代)は「いつ説明するかの説明もない。本当に来年9月に移転するのか」と困惑する。一方で、町民からは「学校も会社と考えれば、人口減の白老から都市に近い場所への移転もやむを得ない」と一定の理解を示す声もあり、反応は一様ではない。
北洋大では、旧短大棟などの既存施設を改修し、高校施設として使用する構想。12月から改修工事に向けて体育館やサッカー場、中・大講義室、教室など学内施設について、一般市民やサークル団体などへの貸与を停止した。
同法人は私立高校を主管する道と、移転に向けた調整を進めているといい、松尾理事長は苫小牧民報の取材に対し、「校舎などの改修計画の図面などを提出し返答を待っている段階」と明かす。その上で「(工事の日程などは)まだ具体的には進んでいない」としつつ、「許可が出ればすぐにでも工事にかかりたい」と話している。
(半澤孝平、藤岡純也)