昨年末に発覚した自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件。くしくも衆院選道9区(胆振・日高管内)がその「表舞台」となった。自民党道9区支部長だった堀井学元衆院議員が、2000万円超のキックバック(還流)を受け、有権者は批判の矛先を向けた。
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衆院議員だった堀井氏は今年1月、登別市内で記者会見を開いた。キックバックを受けていたことを認めて謝罪したが、説明内容が不十分だったこともあり、さらなる政治不信を招いた。春先は地元に「おわび行脚」を行ったが、それまでくすぶっていた批判が強まった。
堀井氏は2021年の衆院選道9区で敗れ、比例代表道ブロックで復活当選した頃から、支援者らの間でも「普段地元に顔を出さない」「何をしているのか分からない」などの声が上がっていた。
自民党苫小牧支部は今年3月、堀井氏の政治姿勢を問題視する異例の意見書を出したが、明確な回答は得られなかった。同支部をはじめ一部の支部は「(堀井氏を)これ以上、応援できない」と突き放した。
堀井氏は4月に党から党の役職停止1年の処分を受け、意を決したように6月下旬、札幌市内で急きょ記者会見。「政治家として、一人の男として、人間として、けじめをつけたい」と次期衆院選の不出馬を表明し、理解を求めた。
しかし、その後も堀井氏は選挙区内で違法に香典を配布したとされる公職選挙法違反が明るみになり、7月には登別市内などの事務所が家宅捜索された。
堀井氏は最終的に議員辞職へと追いやられ、同法違反と政治資金規正法違反で有罪が確定。7月以降は雲隠れしたまま公に姿を現さず、党道9区支部は逆風にさらされながら、衆院選候補者の選出を強いられた。
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そんな中で行われた10月の衆院解散・総選挙。内閣発足から26日後の投開票は戦後最短で、「政治とカネ」の問題が最大の争点となる中、自公政権は過半数割れして少数与党となり、野党第一党の立憲民主党が議席を大幅に伸ばした。
道9区は、立憲民主党の現職山岡達丸氏、自民党新人の松下英樹氏、共産党新人の立野広志氏の争いとなり、山岡氏が10万6007票を獲得して4選。管内全18市町で最多得票という完勝劇だった。
山岡氏は労働組合を中心とした支持基盤を固め、苫小牧市医師連盟の推薦を受けるなど、保守層からも一定の評価を得た。3期10年の活動や実績が評価されたことに加え、「信頼のある政治をつくる」との訴えが浸透。山岡氏は「たくさんある課題の解決など、地域のために全力で頑張っていきたい」と改めて気を引き締める。
自民党の松下氏は、堀井氏の後任として擁立されたが、公認に決まったのは9月末と出遅れ、知名度不足や党の責任を一手に背負う形で敗戦。この地域の与党議席を失う形となった。
ただ、松下氏はその後も草の根活動を繰り広げ、今月1日の同党道9区支部の臨時総会で、次期衆院選の候補者に決まった。松下氏は「またゼロからのスタートとして頑張る」と再出発を誓う。(石川鉄也)
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今年も残すところあと半月。地域の主な出来事を振り返る。