新型コロナウイルスの感染拡大で政府が8日、アイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の29日開業を当面延期する方針を示したことを受け、地元白老町は町内各所に設置したカウントダウンボードを撤去するなど対応に追われた。一方、地元経済団体や観光協会からは再度の延期に伴う地域経済への影響を懸念する声も上がった。
政府による開業再延期発表を受け、町は8日、役場1階ロビーにあるカウントダウン電光表示板の電源を切り、開業日までの残り日数表示を消した。新たな開業日が未定となっている中、公共施設や学校など9カ所に設置しているカウントダウンボードの撤去も始めた。町は今後、町内各所に掲げたウポポイPR看板に記した「5月29日」開業の表示も消す作業を進める。
政府の緊急事態宣言発令に伴い開業日が当初の4月24日から5月29日へ延期され、さらに先送りとなったことで、オープン日から始める予定だった町の事業も再度見直しを迫られることに。ウポポイ近くの駅北観光商業ゾーン(ポロトミンタラ)で計画していたロングランイベントや、JR白老駅を起点にした観光客向け循環バス運行、白老駅併設自由通路の臨時改札口運用といった事業は、新たな開業日に合わせる形でずらす方向だ。
旅行会社に働き掛け、ウポポイ見学や町内での昼食などを組み込んだ観光バスツアーの実施も目指していたが、町経済振興課の担当者は「地域振興を図る観光ツアーも見合わせざるを得ない」と戸惑いを隠せない。
一方、地元経済界からは政府の判断に一定の理解を示しながらも、地域経済や観光振興にもたらす影響を心配する声も出ている。
白老町商工会の熊谷威二会長は「開業に向けて商品開発や設備投資、起業などに動いた地元事業者にとって再延期は打撃。事業意欲もそがれてしまう」と懸念。オープン時期が不透明な状況の中、「観光客を当てにして起業した飲食店など、経営基盤の弱い事業所がこのまま経営を維持できるか心配だ」と述べ、支援策を町に求める考えだ。
同商工会の中村諭事務局長も「開業日が見通せない中、ウポポイ関連のビジネスを予定する事業者は仕入れや生産など事業計画も立てられない状態」とし、「新型コロナに加えてウポポイ再延期の影響は大きい」と指摘する。
白老観光協会の福田茂穂会長は「ウポポイ来場者用の大型バス駐車場や自由通路の臨時改札口など町からの受託事業も動きだせずにおり、観光協会の収入計画にも影響が出ている。観光インフォメーションセンターの物販機能も止まったままで、先行きが不安だ」と話した。