3年後の2023年に完成から半世紀を迎える苫小牧市総合体育館。建設当時に斬新でモダンとされたデザインが今なお目を引くスポーツの殿堂は、地域レベルから大規模なものまでの大会開催や体力・健康づくりの拠点として歴史をたどってきた。年月を重ねた施設は老朽化も進行し続けた。
市は2月の市議会で、同体育館について移転建て替えの方針を表明。25年以降の20年代後半完成を目標に、来年度から構想づくりに着手する考えを示した。
同体育館ではこれまでに雨漏りやメインアリーナの床のゆがみ、空調設備の不具合など、さまざまな設備不良が露見しており、利用者らからも指摘されている。
直近では大規模イベントの誘致や実施に関しての意見も多い。苫小牧地区バスケットボール協会の青山敏之競技委員長はサブアリーナが併設されている函館アリーナなどが好例とし、「サブアリーナがあるのが理想。バスケットコートを4面取れると大会運営もスムーズに進行する」と話した。
市は建て替えを計画する総合体育館について、今年2月に開業した「よつ葉アリーナ十勝」と同等規模を想定。帯広市が既存の体育館を建て替え、バスケットボール3面分のメインアリーナのほか、サブアリーナも併設している施設。ここに準じてメインとサブのアリーナに面する観客席数は合わせて3000超としたい考えだ。
よつ葉アリーナ十勝は外壁にはクラシカルな農業施設を思わせるれんがで外壁を飾り、「酪農が盛んな帯広らしさを演出した」(帯広市スポーツ振興室)。館内もバリアフリーで全世代が利用できる施設を意識した。旧施設との比較で「『広くて明るい施設になった』と市民の評判もいい。幼児向けの遊び場としてキッズコーナーも設けたが使いやすいという声も聞かれる」(同)と言う。
苫小牧市の新・総合体育館総工費を50億~60億円と見込む。「よつ葉アリーナ十勝」の建設に掛かった59億円に匹敵。駐車場は現状約190台収容。イベント時などに不足気味とされてきた点で同アリーナ十勝並みの300~400台収容スペース確保をにらむ。
市は新年度から構想づくりを開始し、実施計画の策定を23年度末をめどに完了させる方針。市スポーツ都市推進課の神保英士課長は次世代の「殿堂」に関する青写真を「バリアフリーで利用者が使いやすい動線を考えて計画したい。プロスポーツの誘致や災害対応など多角的な機能を持った施設としてのオープンを目指す」と語った。
苫小牧市のシンボリックな施設として、名実ともに競技者になった人たちや多くの愛好者、健康を追求する人たちを育み続けてきた市総合体育館。1966年に発せられた全国初の「スポーツ都市宣言」が百年の計で、将来にわたって市民に受け継がれるか―。地域社会で求められる多様なニーズをくみ、生まれ変わる新しい体育館も象徴的な役割を担うはずだ。
=おわり=
(連載は北畠授、石井翔太が担当しました)