安平町早来の雪だるまによる地域おこしの発案者で、元早来雪だるま郵便局局長の真保生紀さんが21日に肝臓がんのため、76歳で亡くなった。雪だるまを国内外に発送するユニークな活動を通じて「早来雪ダルマ」を地域の特産品へと育てた故人をしのび、地元の関係者から追悼する声が広がっている。
真保さんは以前、東京に勤務した経緯があり、雪を見たことがない人に「見せてあげたい」「触らせてあげたい」との発想から雪だるまの全国発送を考案。1986年に、雪だるまの形の発泡スチロールに地元の雪を詰めて全国発送する試みをスタートさせると、徐々にエリアを広げた。
次男の郵生さん(42)は「地球上で日本の真裏に当たるブラジルに届いたら、親父の中で成功という思いがあったようだ」と言う。2008年と19年には町と連携したプロジェクトでブラジルのサンパウロ市へ巨大雪だるまを贈っている。
その一方で、2年ほど前から体調不良で入退院を繰り返していて、19年のサンパウロ行きは断念。今月21日に帰らぬ人となった。郵生さんは「本人はまだやれると思っていたかもしれないけれど、僕らからしたら十分やれるだけのことはやったと思う」とねぎらった。
早来雪だるま郵便局の現局長、三本末紀さん(52)は「10日前に寝ている状態が続いているとは聞いていた。まさかこんなに早く連絡があるとは思っていなかった」と戸惑いを隠さない。入局当時から10年以上にわたり指導を受け、真保さんが退職後も、顔を合わせない日はないほどだった。「今やらないでいつやる、俺がやらずに誰がやる―と行動力満点の方だった」と振り返る。雪だるまの発送は胆振東部地震で冷凍機が破損するなどして中断しているが、「真保さんが生み出した地域の特産品を、その名に恥じぬよう思いを受け継いでいけたら」と話した。
及川秀一郎町長は22日の朝に訃報を聞き、同日自宅を弔問した。「常日頃から場を和ませたり、人を楽しませたりするサービス精神旺盛な方だった。安平町の発展を願って、雪だるまを通じて情報を発信してくれた」と感謝する。雪だるまは同町のカントリーサインで、道民のブラジル移住100周年に合わせての現地訪問など「真保さんなしには実現しなかった」と言い、「雪だるまをキーワードにしたまちづくりを受け継いでいかなければ。町としても努力していきたい」と思いを語った。
真保さんの通夜は24日午後6時から、告別式は25日午前10時から、いずれも早来町民センターで行われる。