アイスホッケー・アジアリーグでプレーオフ・セミファイナルに臨んだ王子イーグルスはハルラに敗れ、今冬の戦いを終えた。多くのスタッフや選手たちのメンバーも交代し、「血の入れ替え」を決行して挑んだシーズンだった。チームの奮闘を3回にわたって振り返る。
■新体制、決意の船出
昨年4月にかつてのチームの元DF、菅原宣宏新監督が就任し、真っ先に「意識改革」に着手した。「自分の仕事に目的意識を持ち、それぞれが主体性を持つチームにする」と常に語り、スタッフと選手の考え方を入念に擦り合わせ、選手の練習や競技に対する取り組み方を見詰めていた。
今季から主将に就いたDF山下敬史は新生チーム始動後の体力錬成期に「全員がリーダーという意識の中でやれているし、チームの雰囲気も良くやれている」と手応えを口にしていた。
補強戦力も旧日本製紙クレインズからGKドリュー・マッキンタイア、FW中島彰吾、●【99cb】木健太、直近はフィンランドで海外挑戦していたFW大澤勇斗らが加入。実績を持つ選手の大量獲得に成功し、優勝候補ともささやかれていた。
氷上練習が本格化して、個々が生き生きとホッケーに取り組む様子がうかがえた。
■好不調の波現れる
レギュラーリーグは昨年8月に開幕。アウェーでの青森県八戸市で迎えた東北フリーブレイズとの2連戦には連勝したものの、苫小牧でのホーム開幕戦となった対ひがし北海道クレインズとの連戦は接戦を落とし2連敗。その後、当時首位だったアニャンハルラとの3連戦に2勝1敗と勝ち越し、一気に持ち直すかと思われたが、勝ちと負けを繰り返し、なかなか波に乗れなかった。
序盤12試合は5勝7敗と負け越し、スタートダッシュがかなわなかった。
特に2点差以内の9試合を見ていくと成績は3勝6敗と接戦での取りこぼしが目立ち、既存メンバーと新加入戦力の融合にやや時間がかかっていたようだ。
■パワープレーとキルプレー
開幕ダッシュ失敗の一因は、ゲーム中に反則退場で生まれるアイスホッケー特有の状況、スペシャルプレーの精度にあった。レギュラーシーズン序盤の段階で攻勢となるパワープレーでの得点率は20%台後半とリーグ上位に達していたものの、少人数で守勢に回るキルプレーの失点率はリーグ最下位を記録した。
この反省を踏まえ、ポジショニングを改良して中盤以降は得点と守備の効率を高め、はっきりと立て直した。
パワープレーでは、若手ホープのFW中屋敷侑史と母チーム復帰の大澤らが引っ張った。中屋敷はパワープレーの場面で積極的な投入が目立ち、「大事な場面で起用されて意気に感じている」と話すように、果敢な好判断で得点を連発。シーズン通算では全36試合に出場し、チーム2位の13ゴールをたたき出した。
「海外では、競技に対する『ハングリー精神』を学んだ」と言う大澤は通算チームトップタイの14ゴール。「最初はなかなかかみ合わないところもあったが、全員が懸命に走り、体を張ったプレーができるようになった」と振り返った。