白老町地域おこし協力隊員の千田聖也さん(27)と藤田姫夏さん(22)が、地域に生息するエゾシカの肉を使った商品開発に取り組んでいる。狩りの段階から携わりたいと、狩猟免許も取得した。狩猟肉を食材にしたジビエ料理が注目を集める中、2人は「シカ肉の地産地消を目指したい」と意気込んでいる。
白老町出身の千田さんは昨年10月、郷土のために力を発揮したいと、協力隊員になった。文化芸術担当として町の事業に関わっているほか、大町商店街の地域食堂「グランマ」を運営。白老牛の牛丼や日替わりランチなどを提供し、地元の女性高齢者スタッフと共に店を切り盛りしている。
地産地消を意識した新たなメニュー開発で目を付けたのがシカ肉。「地元のエゾシカを資源として食材に生かし、地元で消費する取り組みを進めたい」と考えた。シカ肉はカレーライスの具材に使い、早ければ今月からグランマで提供する予定だ。
一方、オホーツク管内斜里町出身の藤田さんは昨年4月、協力隊員になり、町内のポロトの森で森林ガイドを務めている。
ツアーガイドでは、アイヌ伝統食ユクカムオハウ(シカ肉の汁物)やシカ肉の丸焼きといった体験プログラムを提供しており、狩猟肉のジビエ料理に興味を抱いた。そうした中で地元のシカ肉を使用した商品開発を考えるようになり、シカ肉中華まんを発案。アイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の開業に向けて町が整備し、4月にオープンする駅北観光商業ゾーン・観光インフォメーションセンターで売りたいという。
千田さん、藤田さんは共に当面、地元ハンターなどの協力も得ながらシカ肉を調達するが、いずれは自ら狩猟で捕獲して肉に処理し、料理に仕上げるまで一連の作業に携わりたい考え。このため2人は昨年12月、狩猟免許試験を受験し合格。警察の猟銃所持許可を得た後、実地訓練を重ねる。
千田さんは「白老のシカ肉の価値を高め、まちをアピールしたい」と言い、ジャーキー(干し肉)やレトルトカレー商品も開発してインターネットで販売することを検討する。狩猟から調理までの作業風景を記録した動画コンテンツのネット発信も考えている。
藤田さんは、シカ肉中華まんが観光客にも好まれる地元グルメとして成長していくことに期待し、「自然と向き合い、食を得る。そうした営みを通じ、生き物の命を頂くというありがたさも伝えたい」と話している。