白老町で障害者就労支援事業を展開する社会福祉法人の「白老宏友会」と「ホープ」が、4月開業のアイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)内のテナント事業者として飲食店を開設する。白老宏友会は「スイーツカフェななかまど」の店名でテークアウトのカップチーズケーキなどを販売。ホープは「リムセ」の店名でオハウ(サケの汁物)などアイヌ民族伝統食材の料理を提供する。両店とも支援施設の利用者が運営スタッフとなり、両法人は「福祉施設の立場からもアイヌ文化を発信したい」と準備を進めている。
白老宏友会の「スイーツカフェななかまど」は、ウポポイの入り口付近にある「歓迎の広場」で開設。平屋建て木調の店は36平方メートルの広さで、テークアウトの洋菓子、自家焙煎豆を使用したセルフサービスのコーヒー、イチゴやヨモギなど季節の食材を使用したソフトクリームなどを売る。洋菓子を焼く専用窯も導入し、店内で菓子作りの様子を眺められるよう工夫する。
メインの洋菓子は、道産チーズを使ったカップチーズケーキと、アップルパイなどパイ商品。パイはリンゴのほか、ハスカップやイチゴ、あん、アイヌ民族の伝統食材を使用するなどバリエーションを広げる予定。商品はいずれもアイヌ文様をイメージしたデザイン容器に入れて提供する。また、同法人の施設・愛泉園の利用者が作ったTシャツなどアイヌ文様デザイン商品の物販コーナーも設ける。
店は同法人の施設利用者や職員の5人態勢で運営。チーズケーキやパイの商品開発や試作を進める多機能型事業所ポプリ=同町東町=の有城雅章施設長は「障害のある人が働くウポポイの店を通じて、地域共生社会とアイヌ文化を発信したい」と意気込む。
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障害者就労支援施設フロンティア=同町萩野=などを展開するホープの飲食店「リムセ」は、同じく「歓迎の広場」に開設。平屋建て63平方メートルの広さで、20席を備える。メニューはオハウの定食、シカ肉カツカレー、サケの身といくらを使ったサケ親子丼などアイヌ民族の伝統食材を使用した料理を中心とする。シカ肉カツカレーは、地元ハンターから仕入れたエゾシカを同法人の解体処理施設で肉に加工して使用するなど、地産地消もアピールする。
テークアウト商品も用意。アイヌ伝統食のペネイモをはじめ、フライドポテトやザンギ、ジャガイモのコロッケなどを提供する。また、物販コーナーも設け、フロンティアの利用者が制作したアイヌ文様刺しゅうのネックストラップやコースター、苫小牧市など各地にある手をつなぐ育成会関連の障害者支援施設が作った商品を並べる予定だ。
店は施設利用者や職員の10人態勢で運営。職員らが現在、メニューの検討や試作など本格準備に取り掛かっており、ホープの佐藤春光統括施設長は「アイヌ文化発信の観点から、アイヌ民族の伝統食材の植物を畑で栽培し、店の料理に使うことも考えたい。そうした取り組みで利用者の仕事の幅を広げ、社会参加と経済的自立を促したい」と話す。
ウポポイではこの他、同町虎杖浜の温泉ホテル・心のリゾート海の別邸ふる川を系列に持つ「ぬくもりの宿ふる川」(札幌)がエントランス棟にアイヌ伝統食材を使った創作料理のレストランを開設。外食業の「伸和ホールディングス」(札幌)が同じくエントランス棟でフードコート、全国の博物館や美術館などで物販店を展開する「オークコーポレーション」(東京)はウポポイの国立アイヌ民族博物館内で土産品ショップを運営する。