4月のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」開業を見据え、白老町が町内の観光スポットを案内するガイド人材の育成講座を展開している。16日には町コミュニティーセンターで3回目の講座を開き、受講生が白老の自然や景勝地、特産品、歴史などを学んだ。講座は2月にかけて開催し、ウポポイのオープンで入り込み増が期待される観光客の受け入れ体制を築く。
白老では4月24日に国立アイヌ民族博物館と国立民族共生公園で構成するウポポイが開業し、それに伴う観光客の増加が見込まれている。年間100万人を目標にしたウポポイへの来館者を町内各所の観光スポットに誘導し、白老全体の観光振興を図るため、ガイド人材を養成することにした。
講座では苫小牧駒沢大学の岡田路明客員教授、国立アイヌ民族博物館設立準備室やアイヌ民族文化財団、町消防本部の職員を講師に白老の特性や歴史、アイヌ文化、ウポポイの概要、救護知識と技術などを学ぶカリキュラムを用意。町コミセンを会場に昨年12月12日から今年2月6日にかけた全6回の教室を計画し、地元や苫小牧市、登別市の住民38人が受講生となった。
3回目の講座となった16日は岡田客員教授が講師を務め、白老の地形・気象、アヨロ海岸、ポロトの森など自然環境や景勝地、白老牛や虎杖浜たらこなど特産品といった町の概要を説明。アイヌ民族の歴史も取り上げ、北方警備のため幕末に江戸幕府の命令で白老に設けられた仙台藩陣屋と地元アイヌ民族の交流のエピソードなどを紹介した。
町内で外国人観光客などを受け入れる簡易宿所を運営する山地恭平さん(32)は「白老で生まれた者として町をよく知りたいと思い受講した。知識を得て観光客に白老を紹介したい」とし、町内在住の佐々木利昭さん(61)は「会社を定年退職し、これからの人生ではウポポイに関わる活動に携わりたく、いずれ観光ガイドの活動ができれば」と受講の動機を話した。
講座は23日にアイヌ文化全般、30日にウポポイ概要、最終の2月6日は白老のアイヌ文化をテーマに開く予定だ。
ウポポイ開業を控え、白老観光協会は観光客のおもてなし体制の構築に向けて、観光ガイドネットワークを年度内にも立ち上げる。講座の修了者のほか、仙台藩白老元陣屋資料館やポロトの森のガイド人材などにも登録してもらい、同協会の調整の下、観光客のニーズに合わせて地元観光スポットや自然、歴史の地などを紹介、案内する仕組みの構築を目指す。調整の窓口は4月オープンの駅北観光商業ゾーン・観光インフォメーションセンターに置く方針だ。
町はウポポイ開業後も引き続きガイド人材の育成に取り組み、「いずれは有償ボランティアとして活動してもらう体制を築きたい」としている。