▶1 サケ釣りの異変 苫小牧港にも南海の魚 上昇する海水温

  • 特集, 記者ノート2019
  • 2019年12月16日

  胆振地方の海岸は、毎年8月中旬からサケ釣りのシーズンを迎える。釣り倶楽部面の記者である私は、例年海岸を巡り釣り人がサケを上げるシーンを取材してきたのだが、2~3年前から様子が変化してきた。サケが釣れていないのだ。

   近年、伝えられる秋サケの資源減少は、漁業関係者のみならず釣り人をも直撃している。地元釣具店によると、好調だった5年ほど前に比べると今年の釣果は半分以下だった。サケ釣りピークの10月、苫小牧市錦岡の海岸には、ずらりと釣りざおが並んでいたが、なかなか当たりがない。ぼーっとさお先を見詰めている釣り人がほとんどだった。ベテランの釣り人に話を聞くと「まったく反応がないね。いったいどうしたことだろう」と困惑した表情を見せた。

   釣れなくなったサケの代わりに近年、姿を見せ始めたのがブリの子フクラギと引きの強さで有名なカンパチ。どちらも本州の暖かい海に住んでいたはずの魚だ。今年8月下旬には、苫小牧港・西港の東埠頭(ふとう)で30センチほどのフクラギが釣れたとの情報をキャッチした。フクラギを上げた男性は「引きが強く上げるのに苦労した」と語った。

   9月上旬には、苫小牧港・東港の周文埠頭でカンパチを狙っている男性に話を聞けた。今季は20匹ほどを上げており、大きさは20~35センチほど。40センチオーバーと思われる大物も掛けたが、あまりの引きの強さに上げることができずに逃げられたとのことだ。

   地元釣具店の店主に話を聞くと「海水温が上がってすっかり海の中の様子が変わってしまった。従来見掛けない南の海の魚が掛かる始末」と驚いた様子。「今までサケ釣りの道具を多く売っていたが、これからはフクラギやカンパチ釣りの道具を売ることになるかもしれないね」と苦笑した。秋の風物詩だったサケ釣りの光景。環境の変化によりその姿もいつの日か見られなくなるかもしれない。

         (澁谷賢利)

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   2019年も残りわずか。記者たちが今年、印象に残った出来事などを紹介する。

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