夜遅くまでスマホやゲームに興じたり、深夜まで受験勉強に取り組んだりすることによる子どもの睡眠不足が問題視されて久しい。内科と睡眠障害の専門である阪野クリニック(岐阜市)の阪野勝久院長は「放置すると心身に深刻な影響を及ぼしかねません」と話している。
▽免疫低下や肥満にも
阪野院長によると、子どもの夜更かしには複数の要因があるという。思春期になると、体内時計が自然に後ろにずれやすくなる。
スマホやテレビのブルーライトが睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制したり、週末の「寝だめ」が睡眠パターンを乱し体内時計を狂わせたり、ゲームなどが脳を覚醒状態にしてしまったりすることも要因だ。
慢性的な睡眠不足になると、短期的には集中力や記憶力の低下を招き成績が落ちてしまいがち。感情のコントロールが難しくなることもある。常に疲労感が生まれ、メンタルヘルスへの影響も懸念される。
「長期的には、睡眠中に分泌される成長ホルモンが減少し、発育が妨げられる可能性があります。免疫機能が低下して風邪を引きやすくなることもあります」。寝不足が食欲を調整するホルモンのバランスを崩し、肥満にもつながりかねないという。
▽受診も選択肢
米国立睡眠財団が推奨する適切な睡眠時間は3~5歳で10~13時間、6~13歳で9~11時間、14~17歳で8~10時間。ただ、年齢や体質により個人差があるため、一つの目安と捉えるとよい。
子どもの夜更かし解消のポイントは五つ。日中は①太陽光を浴びる②朝ご飯を食べる③適度に運動する―。起きてすぐに太陽光を浴びて体内時計をリセットし、朝ご飯を食べて適度な運動をすることで、夜の自然な睡眠を促すのが目的だ。夜は④電子機器の光を浴びない⑤就寝時刻を決める―。ブルーライトの影響や脳の覚醒状態を抑制するのが狙いだ。
親が早寝早起きするよう繰り返し言っても、改善されなければ互いにストレスになりかねない。「子どもの夜更かしは怠けや意志の問題だけではなく、体内時計や成長過程の影響、生活環境が関係している場合が多いのです。状況をよく観察して、一緒に考えてみるのが大切。日常生活に影響が出ているようなら、精神科や心療内科に相談するのも選択肢の一つです」と、阪野院長はアドバイスしている。
(メディカルトリビューン=時事)
◇ ◇
阪野クリニックの所在地は、郵便番号500―8178 岐阜市清住町1の22。電話058(213)1199。生活環境を整える