勇払幻視【3】 思索が幻視された心象風景か

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  • 2025年6月5日
北川豊《黄昏(1)》1974年、油彩・カンバス、1303×1621ミリ、苫小牧市美術博物館所蔵
北川豊《黄昏(1)》1974年、油彩・カンバス、1303×1621ミリ、苫小牧市美術博物館所蔵
北川豊《人間の風景》1977年、油彩・カンバス、1303×1620ミリ、個人蔵
北川豊《人間の風景》1977年、油彩・カンバス、1303×1620ミリ、個人蔵

 北川豊(1948~82)は、全道美術協会展協会賞や北海道秀作美術展優秀賞の受賞をはじめ、1981年には第24回安井賞展入選など今後の活躍が大きく期待されましたが、病により34歳で早逝した画家です。現存作品は多くありませんが、生と生に伴う孤独感の横溢(おういつ)を描きだそうとする重苦しく沈鬱(ちんうつ)とした雰囲気漂う群像表現は、観るものの視線を強く引き付けるものです。

 《黄昏(1)》(1974年)と《人間の風景》(1977年)は似た構図を持つ作品です。《黄昏(1)》では、画面上部にランプが見え、室内風景のように見えます。室内という場所は、北川の言葉によれば「私の世界」であり、心の中の感情と対峙(たいじ)される場であったようです。本作では壁や床の境目が曖昧で、描かれる人物自体や、そのシチュエーションは判然としません。まるで室内に思索の波がなだれ込む様子を表しているようにも思われ、見る者の潜在的な不安や恐れを喚起させるようです。

 《人間の風景》では、意味あり気に登場する個々の事物が現実の世界ではつじつまの合わない配置で並べられ、見る者に違和感を抱かせるかもしれません。《黄昏(1)》と同じ姿勢で後ろを振り向き座る人物を手掛かりに両作品を見比べてみると、室内での思索に荒漠とした大地のイメージがなだれ込み、心の内と外の境界が、やがて曖昧になっていくような感覚が表されているといえるのではないでしょうか。《人間の風景》の左上に描かれた、小さな悪魔のようなユーモラスな生き物は、ここで描かれる世界が、画家の思索が幻視された心象風景であることを教えてくれているようです。

 (苫小牧市美術博物館主任学芸員 立石絵梨子)

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